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「2006年大会報告」
2006 Annual Meeting of Chem-Bio Informatics Society

"Integration of Chem-Bio-Pharma Informatics
for Rational DrugDevelopment and e-ADMET"

2006年会 大会実行委員長
水間 俊(東京薬科大学)
「はじめに」

 2006年7月24日から26日の3日間にわたって、こまばエミナース(東京)において、情報計算化学生物学会(CBI学会)年会を開催した。
 基調講演および招待講演として総計13名の方々にご講演頂くことができ、また、一般演題(ポスター発表)は74演題、新企画では7名と、総勢94名の演者の方々によるホットな話題を提供頂いた。
 加えて、座長を務めて頂いた先生方、そして会員の方々をはじめ御出席頂いた332名の皆様、さらにその他協賛、寄付、機器展などの関係者の皆様方の御協力により、本年会は無事閉会することができました。ここに、大会委員長として感謝申し上げます。
 以下に、年会のご報告とともに趣旨説明などを通して、2006年会を振り返ってみたい。

「実行委員会」

 昨年、理研で開催された2005年会(小長谷明彦 大会実行委員長)の最終日に、小生が2006年会の大会長を務めることがアナウンスされた。その後、実行委員会を設立するために、本学会がカバーする7分野にそれぞれ1名ずつの委員を予定し、実行委員会への参加を会員に呼びかけた。その結果、4名の方々が自薦、残り3名は他薦(ご紹介)により委員が決定した。それに加えて、多田学会長と事務局理事神沼先生の計10名という構成で、月に1回のペースで会議を開き、2006年会を開催する運びとなった。

「年会テーマ

 年会のテーマは"Integration of Chem-Bio-Pharma Informatics for Rational Drug Development and e-ADMET"としたが、その開催趣旨については本サイトをご参照頂きたい。

「セッションの構成」

 CBI学会では現在、以下の7分野、1. Molecular Computing/2. Molecular Recognition/3. Bioinformatics and Bio Computing/4. Genome Wide Experimental Data Analyses/5. Information and Computing Infrastructure for Drug Design and Toxicology/6. Disease Mechanism and Control Models/7. Medical Genome Informatics and New Technology をカバーしており、開催中3日間にわたり午後は、分野1と2、3と4、6と7をカバーしたレギュラーセッションをそれぞれ各日に行った。また、第1日目の午前中はプレミーティングセッション(日本語セッション)、そして第2および第3日目の午前中には年会テーマセッション(分野5も含)をそれぞれ年会テーマセッション1および年会テーマセッション2として開催した。

「年会テーマセッション」

 本年会の特色である年会テーマセッション1 として、"Wet study of ADMET"と題するセッションを開催した。先ず、基調講演としてSvein Oie 教授(ジョージア大学)によるPharmacokinetics と Toxicokinetics についてのオーバービューを講演して頂き、続いて、橋田充教授(京都大学)によりDDSを主題としたDryとWetの両面での研究をご紹介頂いた。さらに、小野敦博士(医薬基盤研究所)からはトキシコジェノミクスに関する話題をご自身のプロジェクトを含めてご講演頂いた。
 年会テーマセッション 2 の"Dry study of ADMET"においては、基調講演としてDr. Sean Ekins (Arizona Commodity Traders, LLC & Univ. of Maryland)により"Combining Quantitative Structure Activity Relationships and Systems Biology Approaches for in silico ADME/Tox"と題する講演を、Dr. Edward H. Kerns(Wyeth Res.)からは、"Current Strategies for ADMET Integration to Enhance Efficiency and Quality in Drug Discovery"について、そして前田和哉博士 (東京大学)は"In silico database, simulation and prediction for the optimization of pharmacokinetic properties of drug candidates"と題する講演があった。

「レギュラーセッション」

 レギュラーセッションにおいては、先ず分野1&2のセッションでは、招待講演者の北浦 和夫博士(AIST)により"Quantum Chemical Calculations of Binding Energy between Protein and Ligand"と題する講演を頂き、同じく招待講演者の冨本昌樹博士(SGX Pharmaceuticals Inc.) からは"Fragment-based Drug Discovery: Concept and Example"についての講演があった。そして基調講演として、Ruben Abagyan (The Scripps Research Institute)により、"Computational Structural Proteomics and Drug Discovery"と題した講演があった。
 分野3&4のセッションでは、基調講演として、Prof. Kyoung Tai No (延世大学)により"Introduction of Integrated e-Drug Discovery System, Lead Explore"と題する講演があった。そして招待講演として、金谷重彦博士 (奈良先端科学技術大学院大学)から"KNApSAcK:Secondary metabolite database related between metabolites and species"の講演、吉川 澄美博士(理研GSC) から"Pharmaco-Ontologies and their Roles"と題する講演を頂いた。
 分野6&7のセッションは4名の招待講演者による構成で、高野明彦博士 (国立情報学研究所)の"Information Access based on Association"、小池麻子博士 ((株)日立製作所中央研究所)の"Biomedical text mining: state of the art and future direction"、吉田輝彦(国立がんセンター研究所)博士の"Cancer Genomics: Chip, SNP, Database"、塩田邦郎 (東京大学)博士の"Application of Epigenetics on Development of Drugs"とそれぞれ題する講演を頂いた。

「ポスター発表(一般演題)」

 一般演題として、今年もポスター形式をとった。総計74演題が発表され、2日目の懇親会の場で、中田選考委員長からポスター賞の発表、授賞式があり、受賞者に賞状および副賞を贈呈した。受賞演題は以下の通りである。関係者の方々にお祝い申し上げます。
最優秀賞(the Best Poster)
 P3-03: Nozomu Yachie et al., Phylogenetic profiling approach to generate RNA-protein networks in E. coli
優秀賞(the Excellent Posters)
 P1-05: Kaori Fukuzawa et al., Intra- and intermolecular interactions between cyclic-AMP receptor protein and DNA: Ab initio fragment molecular orbital study
 P2-02: Norikazu Takano et al., Solvent Site-Dipole Field Mediating Docking of Biomolecules
 P3-12: Tomokazu Konishi et al, Systematic Errors Commonly Found in GeneChip Expression Data and Effective Compensation Methods thereof
 P5-03: Michihisa Koyama et al, Development of New in silico Method for Predicting Drug Metabolism

「一般演題(ポスター)口頭発表」

 一般演題のポスター発表から12演題が、各分野のバランスをも考慮して選ばれ、質疑応答なしで5分間発表した。12演題という数は、ポスター発表された約5演題に1演題の割合となる。一般演題がポスター発表のみであったことから、この口頭発表は単に内容の紹介を行うだけでは無く、若い演者の方々(ほとんどが大学院生と思われる)が口頭かつ英語で発表する極めて良い機会が得ることができたと考えている。今後、大学院生、ポスドクを対象として、このような企画を開催して行くことは極めて重要であると再認識した。

「新企画

 本年会では、「会員から課題テーマを募集し、その課題に対して会員から回答をして頂く」という新企画を、初日午前中のプレミーティングセッションに設けた。カバーする領域が広い本学会であるので、様々な分野の各会員の方々が日頃問題としていることを提起して頂けることを期待した。同時に、この企画には、年会実行委員でなくも会員がテーマを直接提案し、それを会員に問うことができるという意義も含まれている。
 提案された課題テーマは4つあったが、会員からは以下の2テーマに対して事前に回答があり、講演をお願いした。「医薬品の標的組織への暴露や医薬品併用時の変動幅を予測する方法」のテーマが楠原洋之博士(東京大学)により提案され、加藤基浩博士(中外製薬(株))による回答そして質疑応答があった。また、「OMICS研究の現状と問題点」のテーマが一石英一郎博士(東北大学)より提案され、美宅成樹博士(名古屋大学)、小西智一博士(秋田県立大学)による回答そして質疑応答が展開された。
 さらに、残念ながら回答が無かった残り2テーマについても、提案の趣旨を会員の方にさらに知って頂く意味も含めて、鶴岡誠博士(東京工科大学)、森義裕博士(岡山理科大学)に講演して頂いた。

「使用言語」

 使用言語については、昨年の年会が国際学会として理研(横浜)で開催した流れを汲み、本年会も使用言語は英語とした。参加者には、海外招待講演者に加えて、その関係者(大学院生)、日本への留学生らがおり、また、大会期間中前半に講演された海外招待講演者が最終日まで参加し、質問されていたことを思い出すと、英語の使用は適切な判断であったと考えている。

「最後に」

 招待講演者の方々から、「とてもinformativeな会であった」、「自国でこの会を開催したい」といった感想を頂き、年会開催の準備期間として1年を欠いていたにも関わらず幸いにも実行委員の方々に恵まれ、とても有意義な年会とすることができたと安堵している。講演内容に関する詳細な解説は、会員のほぼ全ての方々が年会に出席されていると思われるので、割愛させて頂いた。
 2000年から始まった年会も着実に足跡を残して来ている。来年は広島で開催されることが、年会最終日にアナウンスされた。今後のさらなる年会ならびにCBI学会の発展を祈念したい。数年前の年会で知り合いとなったある大学院生(留学生)に1年ぶりに再会したが、最終日にSee you next year.と言って別れた。会員の皆さん、広島で会いましょう。

情報計算化学生物学会(CBI学会)事務局
〒158-0097 東京都世田谷区用賀4-3-16イイダビル301
Tel:03-5491-5423 Fax:03-5491-5462
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