開催趣旨
CBI学会2006年大会
"Integration of Chem-Bio-Pharma Informatics
      for Rational Drug Development and e-ADMET"
 昨年(2005年)5月に、「e-ADMET構築に向けて」と題する本学会主催講演会を開催した。嬉しいことに、会場が満杯となる多くの参加者に出席頂き、e-ADMETに関する関心の高さをあらためて認識することとなった。ADMET、すなわち薬物の体内動態と毒性は、医薬品の開発、使用において極めて重要な位置を占め、その認識は年々高まっている。しかしながら、その開発スピード、開発費など、医薬品開発におけるADMETの検討には多くの課題があり、今後を考えるとき、従来とは異なったアプローチの方法が望まれる。その方法とは、e-ADMETなるものを確立することである。すなわち、いわゆる実験(ウエット)をできるだけ減らし、既存の情報をできるだけ駆使していくような情報科学的、計算科学的なin silico(ドライ)な方法である。この方法が確立できれば、医薬品開発法は大きく変わり、先ず、ヒト、モノ、カネ、時間の効率化が可能となる。さらに、実験動物使用の問題や脳死判定に関わるヒト組織使用の問題とは無縁とすることができる。

 医薬品開発のためには、化学(化学物質)を知り、生物学(生体)を知り、それをもとに、その間に起こる様々なことを理解することが重要であり、それを体系化したものが薬学であると私は理解している。また、薬(医薬品)は単なる「物」とは違い、それに情報を合わせ持って、医薬品として価値がある。 「CBI学会は、化学(Chemistry)、生物学(Biology)、情報計算学(Informatics)という3つの学問分野に関わる先端的な研究開発の基盤構築をめざす〜」と、本学会のホームページに記されているように、本学会は、複数の学問分野の研究者の集団である。

 そこで、より合理的な医薬品開発を目指すとき、これらの複数の領域、すなわち化学、生物学、薬学と情報計算科学が、そしてウェット領域とドライ領域が、融合統合され、様々な学問分野の研究者たちによって、Brain Stormingをすることが必要不可欠となるが、本学会はそのためには極めて適した場である。よって、CBI学会2006年大会は、常設の各領域のセッションに加えて、本年会テーマとして、「Integration of Chem-Bio-Pharma Informatics for Rational Drug Development and e-ADMET」を掲げ、開催することとした。
大会委員長 水間 俊(東京薬科大学)