開催趣旨:世界の先進国は「化合物恩恵」の時代から、「化合物毒性を認識しての共存」時代へと突入している。欧米各国では、化合物との共存を目指す様々な取り組みが、国や企業の枠を超えて実施されている。化合物毒性問題は、創薬では対応を誤れば製薬会社自体の存続を危ぶませる深刻な薬害問題へと発展する。化学企業はREACH、TSCA、化審法等の国際的に張り巡らされた化合物規制をクリアしなければ、企業活動自体が出来ない。また、対象が生体から生態に変わると環境規制のクリアが必要となる。さらに、人体に代わるものとして利用されてきた動物も、動物愛護の観点からEUでは化粧品関連分野では昨年より動物実験が禁止された。WET実験を主体とした従来の毒性研究だけで、「化合物の恩恵」時代から「化合物との共存時代」へと大きく変化した時代の要求に答えることは極めて困難になりつつある。この問題をクリアする有力な手法としてコンピュータを用いた毒性評価が注目されている。導入当初は、参考レベル程度の位置づけであったものが、最近では毒性評価においてより大きな役割を担うべく期待され、その重要性は急速に増大している。このような変化を受け、欧米ではコンピュータを積極的に取り入れた「計算毒性学(Computational Toxicology)」なる研究分野が立ちあがった。「化合物との共存時代」にふさわしいコンピュータによる毒性評価関連研究やワークショップ等が立ち上がり、化合物毒性でのDRY研究において多くの成果を生み出しつつある。 一方で日本では、欧米同様の先進国にもかかわらずコンピュータを用いた毒性評価への取り組みは殆どされていない。学会等での発表の場もなく、ワークショップ等の活動も存在せず、西欧のフォローもままならない状態である。このような状況を打破すべくCBI学会にて「計算毒性学」研究会の創設が認められた。今回はこの研究会のキックオフミーティングとなる。日本では新規の研究分野となるので、研究会ではあっても研究成果を発表しあう講演の場としての役割は想定していない。研究分野や研究内容の異なる研究者が「計算毒性学」という新しい研究に関して忌憚なく討論し、国内や国外の情報を交換しあえる共通のサロンとしての役割を担うことを主たる目的としたい。この意味でも、今回のキックオフミーティングでは計算機による毒性研究への問題提起や、毒性評価への疑問や質問、情報交換を目的とした討論が出来ればと考えている。
日時: 2014年10月27日(月)13:25-17:30 会場: タワーホール船堀 研修室(東京都江戸川区船堀4-1-1) 主催: 情報計算化学生物学会(CBI学会)計算毒性学研究会 世話人: 湯田浩太郎(インシリコデータ)、水間俊(松山大学)
プログラム
- 13:25 - 13:30 発起人挨拶 湯田浩太郎
- 13:30 - 14:00
「インシリコによる医薬品中不純物の安全性評価と、その向上に向けた国際共同研究」
本間正充(国立医薬品食品衛生研究所)
- 14:00 - 14:30
「産業界における代替法の重要性―特に皮膚感作性について」
佐藤一博(福井大学医学部)
- 14:30-15:00
「ベイジアンネットワークシステムRX-TAOGENを用いた発がん物質の簡易予測」
曽根秀子(国立環境研究所)
<15:00 - 15:10 休憩>
- 15:10 - 15:40
「ヒトiPS細胞由来肝細胞を用いた薬剤毒性評価技術 ― 計算毒性学に期待すること ―」
石田誠一(国立医薬品食品衛生研究所)
- 15:40 - 16:00
「TRI (Toxicity Risk Index) によるIdiosyncratic Drug Toxicityの予測」
水間俊(松山大学薬学部)
- 16:00 - 16:40
「計算毒性学の基本概念と展開、計算機による発がん性に関する要因解析と予測」
湯田浩太郎(インシリコデータ)
- 16:40 - 17:25
総合討論、今後の運営方針等
- 17:25 - 17:30 閉会の辞
小長谷明彦(東京工業大学)
参加費無料参加申込み終了しましたお問い合わせ◆情報計算化学生物学会(CBI学会)事務局
TEL:045-924-5654 FAX:045-924-5684