***第465回CBI学会講演会のお知らせ***

 「最新のin vitro, 動物, in silico (PBPK) 手法による薬物動態予測の深化」

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開催趣旨
  ヒト由来組織の利用が普及したことで、肝クリアランスの予測精度は大きく向上しました。しかし、低クリアランス化合物や胆汁排泄クリアランスの定量的予測法など、標準化された手法が未だ確立されていない領域も多く、薬物動態予測にはなお多くの課題が残されています。本講演会では、こうした既存手法の限界を克服し得る新たなツールとして、肝キメラマウスや新規肝細胞培養系であるicHepの活用についてご紹介いただきます。これらのツールは、薬物動態に関する理解をさらに深化させるものとして期待されています。さらに、in silico(PBPKモデル)解析の分野でも技術は日々進歩しており、薬物間相互作用(DDI)や血清ビリルビン値の上昇、さらには非線形動態のメカニズム解析といったトピックスにおける最新の研究動向についてもご紹介いただきます。

日時 2025年7月8日(火)13:00-17:50
場所 オンライン配信(Zoomウェビナー使用)
世話人 杉山 雄一(城西国際大学 イノベーションベース),土谷 聡耀(慶應義塾大学薬学部)
連絡先: お問い合わせは、下記メールまたはTELにお願いいたします。

TEL: 03-6435-0458 (情報計算化学生物学会(CBI学会)事務局)

プログラム  

  1. 13:00 - 13:10 はじめに 

  2. 13:10 - 13:50
    「シクロスポリン(CsA)のOATP1B1阻害に関する時間依存性DDI(trans-inhibition)は臨床データにどのように反映されるか?―PBPKを用いた解析」
    杉山 雄一(城西国際大学)

    薬物相互作用の時間依存性解析は、これまで主に代謝酵素に対するmechanism-based inhibition(MBI)に焦点を当て、in vitro試験や臨床データが蓄積されてきた。一方で、OATP1B1、OCT1などのトランスポーターに関しても、in vitro試験で時間依存的な阻害が報告されているが、これらの阻害メカニズムのin vivoへの反映については全く検討されていない。近年の研究では、シクロスポリン(CsA)がOATP1B1を細胞内側から阻害する「trans-inhibition」が確認されており、これはOATP1B1のコンフォメーション変化を介した非競合的な阻害である可能性を示唆してきた。この阻害様式は、従来の競合阻害とは異なる薬物動態的特徴を有し、臨床的DDI予測において新たな視点を提供する。本発表は、エーザイの和泉博士、野崎博士との共同研究を介して行われたものである。

  3. 13:50 - 14:30
    「血清ビリルビン値上昇の原因は薬物による肝毒性か?酵素やトランスポーターの阻害か?これらを区別するためのPBPKモデル解析」
    中山 慎司(田辺三菱製薬株式会社 創薬本部 薬物動態研究所)

    薬物投与に伴う血清ビリルビンの上昇は、肝機能障害や肝不全の可能性を検出するための代表的な検査指標である。一方で、薬物がビリルビンの消失に関わる酵素やトランスポーターの機能を阻害することにより、肝障害がなくても血清ビリルビンが増加する場合がある。肝毒性は医薬品開発中止判断にもつながることから、血清ビリルビン値上昇の機序を定量的に解釈することは重要である。本発表では、PBPKモデル解析を活用した抗HIV薬の血清ビリルビン値上昇の定量的な解析に関する研究を紹介する。加えて、演者らが実施している抗HCV薬の解析事例についても紹介し、PBPKモデル解析の意義を議論する。


  4. 14:30 - 15:10
    「胆汁成分の回収が可能な肝細胞培養系icHepの作成と薬物動態解析への応用」
    荒川 大(名古屋市立大学大学院薬学研究科)

    薬物の胆汁中排泄は主要な薬物消失過程となるが、初代ヒト肝細胞を用いた評価が難しい。その理由として初代培養肝細胞では胆管が細胞間に形成され、分泌された胆汁成分を回収できないことが挙げられる。我々は密着結合タンパク質claudin-1をコートした培養器材を用いることで、ヒト肝細胞の胆管を培養器材側へ開口させる培養系icHepの作成に成功した。本講演ではicHep系を用いた薬物胆汁中排泄予測や薬物代謝物の血中・胆汁移行性予測などの薬物動態解析における応用事例を紹介する。

  5. <15:10 - 15:30 休憩>

  6. 15:30 - 16:10
    「Humanized miceを用いた肝クリアランスの予測」
    三宅 泰司(中外製薬株式会社 医科学薬理部)

    ヒト薬物動態予測には、①ヒト細胞を用いたin vitroからの予測方法と②野生型動物を用いた経験則によるin vivoからの予測方法の2種類のアプローチが従来から存在する。しかしながら、in vitro系では被験化合物の物性の悪さやヒト生理学的条件の再現の限界があり、in vivo系では代謝酵素やトランスポーターなどの種差があるため、より精緻なヒト予測は限界がある。そこで、我々は経験則ではない予測系としてHumanized miceを用いた手法を開発している。今回は、ヒト肝細胞キメラマウスを使った肝クリアランスや薬物間相互作用の予測を紹介する。

  7. 16:10 - 16:50
    「PBPKモデル解析によって非線形薬物動態のメカニズムを理解しバイオアベイラビリティを推定する方法とは?」
    土谷 聡耀(慶應義塾大学薬学部)

    代謝酵素やトランスポーターの飽和によって生じる非線形薬物動態をPBPKモデルでメカニズム解析する際、一般的にミカエリス定数Kmと薬物の非結合型濃度の比較が行われる。しかし、これだけでメカニズムを結論づけることは不十分である。実際には感度分析やクリアランスの時間推移、モデルのシミュレーションから得られる消化管吸収率(Fa)、小腸アベイラビリティ (Fg)、肝アベイラビリティ(Fh)を総合的に評価する必要がある。また FaFgFhの積から、非線形条件下におけるバイオアベイラビリティを概算することができ、非線形薬物動態への理解を深めることが可能となる。


  8. 16:50 - 17:50 総合討論


講演会参加費
(種別) (料金)
法人会員 無料
一般 個人会員A 無料
個人会員B ¥3,000
非会員(一般) ¥10,000
学生 学生会員 無料
非会員(学生) ¥1,000

キャンセルの場合、2025年6月30日(月)までにご連絡いただければ手数料を差し引いて返金します。
それ以降は講演会参加費のキャンセル返金はできません。
コンビニ決済を選択すると5日間の支払猶予期間がありますが、支払いが完了しないと正式な参加申し込みとはならないため、締切日にご留意ください。
(ただし、定員オーバーで参加できない可能性があることをご容赦願います)
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参加申込み 
5月8日より申込を開始いたします。
お問い合わせ
◆情報計算化学生物学会(CBI学会)事務局
  
   TEL:03-6435-0458