退任の挨拶


田中 博

東北大学 東北メディカル・メガバンク機構/東京医科歯科大学 名誉教授                         

   本年3月末をもって情報計算生物化学(CBI)学会の学会長を退任するに当たり、ご挨拶を申し上げたいと思います。

 私がCBI学会長に就任しました2011年4月当時は、我が国においては東日本大震災があった年ですが、本CBI学会に於きましても大変な過渡期・動乱期でありました。これまでCBI学会を創設し、その後も陰になり日向になり学会を主導して頂いた神沼先生がCBI学会活動の中軸から引退されることとなり、CBI学会のこれまでの学会長の先生を始めとして、現在NPO法人の理事長である小長谷先生、さらにこれまで学会を支えて来られた諸先生と、前年度から頻回に亘って集まり、本CBI学会の再体制化に向けて熱心に議論したことを覚えています。その結果、翌年にはNPO法人CPI学会が立ち上がり、現在のCBI学会体制が順次確立して行きました。

 本CBI学会およびその前身(2000年以前)のCBI研究会は、かつてから「インシリコ創薬」を中心的な学術活動とする学術団体として広く認識されています。当時の学会長としての私に期待された役割は、これに加え、シーケンス革命などによって急速に進展していた「ゲノム・オミックス医療・創薬」に関して、特に医学系の研究者の本学会へ参加を促進し、学会のサブ領域として拡充を図るということでした。その一環として日本バイオインフォマティックス学会や日本オミックス医療学会への合同大会開催に本学会が積極的に関わっていた時期もありましたが、「学会エコシステム」の諸限界もあり、学会長としての6年を鑑みましてこの方面での活動が十分達成できなかったことは心残りです。

   ただ、「インシリコ創薬」は、ますます「ビッグデータ」や「人工知能」時代を向え、基盤的な理論・技術として重要性を増加しています。無闇に周辺分野との「拡張・包摂化」を図るより、「インシリコ創薬」の学会としての「深化と代表性」を明確にし、その強靭な基盤の上に周辺関連分野へと積極的に関与する方向こそが――本学会の進むべき途と思います。    私がいる東北大学メディカル・メガバンクのグループは、実名のコホート情報基盤システムや匿名化後の統合データベースの構築・運営、そのインテリジェント化に従事しています。また東京医科歯科大のグループは、近年、「網羅的分子プロファイル情報を基礎にしたAI創薬・DR」の研究に取り組んで、現在私も「AI創薬」の単行本の執筆に追われています。学会長時代はあまり創薬研究に関与していませんでしたが、学会長退任後は、いろいろな部面でCBI学会にご協力・貢献することが出来そうです。

   CBI学会の皆様方の今後の活躍と学会のさらなる発展を祈願して、簡単ですが退任の挨拶としたいと思います。

平成29年3月 吉日

情報計算化学生物学会(CBI学会)