[演者からの講演要旨]
ヒトゲノムすなわちヒトという生命の設計図を解明しようとする研究は国際プロジェクトとして10年前に開始され、その壮大な目標から生命科学におけるアポロ計画として推進されてきた。昨年12月、我々を含む日英米チームは人類史上初めて、ヒト染色体(22番)を一本丸ごと解読することに成功し、天地創造の瞬間に喩えられた。次いで、今年5月には日独チームの一員として21番染色体の解読にも成功した。この秋には国際チーム協同でヒトゲノム「生命の書」の概要版が公表される。このようなヒトゲノムの情報と技術は、新たな生命科学の展開や疾病の診断・治療・予防法の開発に必須の基盤であり、生命の尊厳に関して新しい価値観をも生み出すと思われる。本講演では、我々の成果を中心にヒトゲノム解析研究の最先端を紹介し、ヒトという究極の生物の設計図の謎解きに迫る。また、その厖大な成果を有効利用するためのデータベース構築の試みを述べ、新たなヒト分子生物学とゲノム医学への展開について考察する。