開催趣旨:
近年、薬物相互作用のメカニズムや標的分子の多様化・複雑化の流れを受けて、現在、日米欧3極において、創薬過程における薬物相互作用リスクの適正評価に関する新しいガイダンス/ガイドラインの策定作業が進んでいる。日本では、2012年12月より新薬物相互作用ガイドラインの策定委員会が組織され、改定作業・パブリックコメントの聴取を経て、2014年7月に「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン」案の最終版が公表されるに至っている。
今回のガイドラインでは、数多くの決定樹が示されており、一見、薬物相互作用リスクの評価手順は確立したかのように見える。しかしながら、実際の相互作用事例や、その予測をin vitro実験や数理モデル解析から目指した論文を見るにつけ、十把一からげにはいかない側面も多数顕在化してきている。例えば、代謝酵素/トランスポーターのin vitro阻害実験一つとっても、阻害剤のpreincubationの必要性、相互作用の実態をより反映しうる典型基質の選択(阻害強度の基質依存性)、阻害剤の細胞内濃縮率の推定など、様々な課題がある。また、相互作用予測における数理モデル解析の有用性が各極の(ドラフト)ガイダンス/ガイドライン上に明記されており、実際の審査過程における運用も始まってはいる。しかし、全ての薬物について統一的に適用できるようなbottom-upアプローチに基づくモデル構築の方法論は未だ定まっておらず、case by caseで処理されているのが現状である。
本講演会においては、各極の(ドラフト)ガイダンス/ガイドラインが一通り出揃い、その内容はある程度企業サイドにも浸透してきたことを鑑み、さらに過去に本講演会シリーズでも取りあげてきたことから、単なる内容の解説は扱わない。むしろ、今後、ガイダンス/ガイドラインを運用するに当たり、相互作用リスクを判定する際に、重要ではあるが解決されていない問題・疑問点を、その記載の枠を超えて一通り整理すると共に、将来的に用いうる相互作用予測のための新しい方法論についても併せて議論したいと考えている。加えて、製薬会社において実際に相互作用ガイダンス/ガイドラインを運用している方々をお招きし、会場の皆さんと一緒に、創薬現場で直面した課題や予測の成功/失敗例等を共有し、ざっくばらんに議論できる場としてラウンドテーブルディスカッションも用意した。本講演会が、原則論を展開せざるを得ないガイダンス/ガイドラインには書き得なかったような、創薬過程における実践的な相互作用予測のためになすべき事を理解するための道しるべになることを期待している。
日時: 2015年6月11日(木)10:30-17:45 場所: 東京大学山上会館2階 大会議室(東京都文京区本郷7-3-1) 世話人: 杉山雄一(理化学研究所)、前田和哉(東京大学大学院薬学系研究科)
プログラム
- 10:30 - 11:15
「はじめに: DDI予測の現状と将来」
杉山雄一(理化学研究所)
- 11:15 - 11:50
「代謝におけるDDIの予測; 今後の問題点」
伊藤清美(武蔵野大学薬学部)
<11:50-13:20 昼食休憩>- 13:20 - 13:55
「トランスポーターを介したDDIリスク予測を考える上での留意点」
前田和哉(東京大学大学院薬学系研究科)
- 13:55 - 14:30
「消化管吸収におけるDDIの評価と数理モデルによる予測」
樋坂章博(千葉大学大学院薬学研究院)
- 14:30 - 15:05
<15:05-15:25 休憩>
「内因性化合物の変動を利用した薬物間相互作用の予測」
楠原洋之(東京大学大学院薬学系研究科)
発表資料- 15:25 - 17:45
ラウンドテーブル議論
コーディネーター:久米俊行(田辺三菱製薬株式会社)、奥平典子(第一三共株式会社) 「Static modelおよびcut off値はP-gp関与のDDI評価に妥当か?~Dabigatran etexilateを例として~」
石黒直樹(日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社) 「酵素誘導試験における課題と対策~3極のDDI指針の共通点と相違点~」
矢島加奈子(株式会社新日本科学) 「ヒト腸管におけるトランスポーターを介した薬物間相互作用の予測」
安平明公(大正製薬株式会社) 「薬物代謝酵素とP-gpが関与するDDIのPBPKモデリング」
仲丸善喜(田辺三菱製薬株式会社)- 18:30 - 20:30 懇親会 (場所:1階 談話ホール 参加費:\3,000)
講演会参加費参加申込み
(種別) (料金) 法人会員 無料 一般 個人会員 無料 非会員(一般) \10,000 学生 学生会員 無料 非会員(学生) \1,000 終了しました。お問い合わせ◆情報計算化学生物学会(CBI学会)事務局
TEL:045-924-5654 FAX:045-924-5684