開催趣旨:薬物トランスポーター研究の進展と共に、様々なin vitro実験系が開発され、創薬過程においても、薬物トランスポーターが体内動態の規定要因になっているか、薬物相互作用の標的になりうるかといった検討が実施されるようになってきた。その中で、in vitro実験の結果を元にして、ヒトin vivo体内動態を精度よく定量的に予測することが最も大きなミッションといえる。理論的には、”extended pharmacokinetic concept”をはじめ膜透過過程を考慮したクリアランスの考え方が既に確立しているが、一方で、これら素過程のクリアランスの速度論パラメータすべてをin vitro実験から適切に分離評価することは難しい。また、旧来の薬物動態の理論に従えば、in vitro実験の結果をそのままscale upすることによりin vivoでの機能を見積もることができるはずであるが、実際には、例えばヒトpooled肝細胞を用いて求められたin vitro肝取り込みクリアランスを用いてヒトin vivo肝クリアランスを予測すると、大幅にunderestimationしてしまうとの報告も複数なされており、”pure bottom-up”による薬物動態予測は必ずしもうまくいっていないのが現状である。 本セミナーにおいては、in vitro実験の結果を用いて、単純なscale upでは算出が困難な薬物動態パラメータに対してどの様にアプローチするかについて議論すると共に、”pure bottom-up”による予測が現状で必ずしもうまくいっていないのかについて、その原因の一つとしての実験条件による結果の相違について現状のデータを持ち寄って、その原因の解釈に至るまでを討論することを目的としている。今回は、トランスポーターを介した輸送のみに焦点を絞っているが、こうした継続的な情報共有の活動を通じて、最終的には、全ての薬物動態パラメータについて、予測性の極めて高いin vitro実験条件・評価法の標準化を目指したいと考えている。
日時: 2016年6月2日(木)10:30-17:50 場所: 東京大学山上会館2階 大会議室(東京都文京区本郷7-3-1) 世話人: 杉山雄一(理化学研究所)、前田和哉(東京大学大学院薬学系研究科)
ラウンドテーブルディスカッション・モデレーター: 杉山雄一(理化学研究所)、前田和哉(東京大学大学院薬学系研究科)、奥平典子(第一三共株式会社)、浅海竜太(小野薬品工業株式会社)
プログラム
- 10:30-11:00
「本講演会の目指すもの」
杉山雄一(理化学研究所)
- 11:00-11:50
「トランスポーターの関わるヒト肝クリアランスの予測; アルブミンの関与する肝取り込みをin vitroで評価すべきか?」
杉山雄一(理化学研究所)- 11:50-12:35
「肝臓における薬物間相互作用の解析; IVIVEはどの程度可能か?」
前田和哉(東京大学大学院薬学系研究科)
<12:35-13:30 昼食休憩>- 13:30-14:05
「多様な相互作用活性(誘導、阻害)を持つリファンピシンはそれ自身が肝臓内に濃縮的に取り込まれる; そのin vitro評価とPBPKモデルへの組み込み」
浅海竜太(小野薬品工業株式会社)
- 14:05-14:35
「時間依存性のOATP阻害を示すin vitro dataを用いてどのようにin vivo予測に活かしていけばよいのか?」
設楽悦久(サノフィ株式会社)
- 14:35-15:15
「脳におけるフリー薬物濃度を、in vitro試験、in silico試験より予測するための方法論の提案」
楠原洋之(東京大学大学院薬学系研究科)
- 15:15-15:50
「消化管におけるP-gp, CYP3A4 の活性がFaFgに与える影響をin vitro dataを基に予測する」
高野順市(杏林製薬株式会社)
<15:50-16:05 休憩>- 16:05-18:00
ラウンドテーブルディスカッション
「薬物輸送の測定法、解析法の違いに起因する薬物間相互作用予測の実験室間の違いの最小化を目指して」 モデレーター;杉山雄一(理化学研究所)、前田和哉(東京大学大学院薬学系研究科)、奥平典子(第一三共株式会社)、浅海竜太(小野薬品株式会社) 討論に加わる方 (スピーカーの全員および有志)- 18:15 - 20:15 懇親会 (場所:1階 談話ホール 参加費:\3,000)
講演会参加費参加申込み
(種別) (料金) 法人会員 無料 一般 個人会員 無料 非会員(一般) \10,000 学生 学生会員 無料 非会員(学生) \1,000 終了いたしましたお問い合わせ◆情報計算化学生物学会(CBI学会)事務局
TEL:03-6890-1087