開催趣旨:
化合物の構造式の情報に基づき、薬物体内動態および組織移行性を定量的に予測するための方法論の構築は、特に創薬初期段階における医薬品の探索・最適化過程の迅速化、そして臨床開発フェーズでの成功確率を高めるために必須である。化合物の組織移行性は、当該組織における生体膜透過性のみならず血中滞留性の両方によって決定付けられる。これら両方のプロセスは、複数の代謝酵素・トランスポーターの機能・タンパク結合性・受動拡散による膜透過など数多くの素過程の集積としてのシステムを形成している。従って、個々の素過程を表すパラメータについてQSPR・QSARなどin silico予測系を確立し、生体システムを模倣した数理モデル上に統合することで、アウトカムとしての組織移行性・血中滞留性が定量化することができる。さらに、薬効・副作用の標的分子との相互作用に関する定量的な情報を連結することにより、薬効・副作用の予測にも繋げることができる。また、実際の臨床現場を想定すると、患者間の背景や外的要因(併用薬など)の違いにより、同じヒトでも薬物動態・組織移行性には個人間変動が認められる。そこで我々はこれまで、各パラメータの集団における平均値だけではなく、パラメータの個人間ばらつき(分散)を考慮して、仮想的な患者集団におけるシミュレーションを行うvirtual clinical trialシステムを提案してきた。これらの知見は、医薬品開発の成功確率を著しく向上するのに貢献できるものと期待されている。
本講演会においては、上記の構想のパーツとなりえる要素技術について解説すると共に、研究の現状と今後の展望について、創薬に携わっている現場の方々と討論をすることで、より実用的に価値あるシステム構築につなげていきたいと考えている。
日時: 2016年12月8日(木)10:30-17:40 場所: 東京大学山上会館2階 大会議室(東京都文京区本郷7-3-1) 世話人: 杉山雄一(理化学研究所)、楠原洋之(東京大学大学院薬学系研究科)
プログラム
- 10:30-10:50
「はじめに」
杉山雄一(理化学研究所)
- 10:50-11:35
「化学構造よりトランスポーターの基質特性を予測する; サポートベクターマシーンの利用 」
年本広太(理化学研究所)- 11:35-12:20
「化合物の化学構造に基づく薬物の主要クリアランス経路の予測」
前田和哉(東京大学大学院薬学系研究科)
<12:20-13:30 昼食休憩>- 13:30-14:15
「多階層生体機能モデリング&シミュレーションプラットフォームを利用した薬物動態予測研究」
山下富義(京都大学)
[参考資料]
1."代謝酵素誘導を伴う薬物間相互作用のモデリング&シミュレーション",日本薬理学会誌,147: 95-100(2016).
2.Yamashita F, et al. "Modeling of Rifampicin-Induced CYP3A4 Activation Dynamics for the Prediction of Clinical Drug-Drug Interactions from In Vitro Data", PLoS One, 8(9): e70330- (2013).
- 14:15-15:00
「in vitroデータを基にした中枢での受容体占有率の予測」
楠原洋之(東京大学大学院薬学系研究科)
<15:00-15:20 休憩>- 15:20-16:05
「低分子化合物による肝障害誘発特性の予測」
鈴木洋史(東大病院・薬剤)
- 16:05-16:50
「Virtual clinical study (VCS)による臨床開発の支援」
杉山雄一、年本広太(理化学研究所)
- 16:50-17:40
総合討論
- 18:00-20:00
懇親会 (場所:1階 談話ホール 参加費:\3,000)
講演会参加費参加申込み
(種別) (料金) 法人会員 無料 一般 個人会員 無料 非会員(一般) \10,000 学生 学生会員 無料 非会員(学生) \1,000 終了しましたお問い合わせ◆情報計算化学生物学会(CBI学会)事務局
TEL:03-6890-1087