開催趣旨:
近年、科学研究のあり方は大きな変革期を迎えており、オープンサイエンスが重要な役割を担うようになっています。オープンサイエンスとは、研究データや成果をオープンに共有することで、学際的な連携を促進し、研究の効率や透明性を向上させる取り組みです。特に、技術革新のスピードが加速する中、従来の研究枠組みでは対応が難しい複雑な課題に対して、オープンサイエンスのアプローチは新たな解決策となる可能性があります。本講演会では、オープンサイエンスの基本的な理念や国内外の動向を概説するとともに、実際にオープンサイエンスを活用した具体的な事例をご紹介いただきます。また、研究コミュニティの形成や技術革新の加速など、オープンサイエンスがもたらす社会的な影響についても議論を深めていきます。参加者の皆様にオープンサイエンスの可能性を共有し、次世代の科学研究の未来像をともに考える場としたいと考えています。
日時: 2025年11月28日(金)13:00-16:50 場所: オンライン配信(Zoomウェビナー使用) 世話人: 高橋 一敏(味の素株式会社)、新井 浩一郎(旭化成ファーマ株式会社)、
大川 和史(塩野義製薬株式会社)、芹沢 貴之(第一三共株式会社)、
宮野 奈津美(帝人ファーマ株式会社)連絡先: お問い合わせは、下記メールまたはTELにお願いいたします。
TEL: 03-6435-0458 (情報計算化学生物学会(CBI学会)事務局)
プログラム
- 13:00 - 13:05 挨拶
- 13:05 - 13:30
「オープンサイエンスとは?どうして重要か?国内外の違いについて」
芹沢 貴之 (第一三共株式会社)
近年、創薬の分野においてオープンサイエンスはより一層重要性が増している。オープンサイエンスとは「透明性があり、アクセス可能な知識であり、共同ネットワークを通じて共有され、発展されるもの」と定義される。創薬に関連したAI研究の進展にはオープンサイエンスが大きく関わっている。例えば、論文発表とともにコードが公開される。そして、そこにコミュニティが形成され、公開されたコードを元に新しい活用方法が見いだされたり、コードそのものが洗練されたりしていくなど、サイエンスの発展に有益なエコシステムが形成される。
本講演はオープンサイエンスに関する重要性、課題の共有と国内外での違いなどに関して議論する場としたい。
- 13:30 - 14:10
「FMO創薬におけるオープンサイエンス」
福澤 薫 (大阪大学)
我々は、日本発の量子化学計算手法であるフラグメント分子軌道(FMO)法を中核とした実用的な創薬手法の研究開発とその応用研究を行っている。FMOコア技術の開発、各種計算科学手法との連携、実験研究との融合によって、研究成果の創出と創薬手法としての実用化を進めるとともに、未来に向けて不可欠な研究コミュニティの形成や人材育成を行っている。本講演では、CBI学会のFMO研究会や産学官連携のFMO創薬コンソーシアムの活動およびFMOデータベースの構築と公開などのオープンな取り組みを紹介する。
- 14:10 - 14:40
<14:40 - 15:00 休憩>
「Machine-Learned Molecular Mechanics Force Fields Leveraging the OpenFF Ecosystem and Open Science」
鷹羽 健一郎 (旭化成ファーマ株式会社)
近年、機械学習を活用した分子力場の開発が注目されている。espaloma-0.3は、グラフニューラルネットワークを用いて原子の化学環境を連続的に表現し、小分子・タンパク質・核酸など創薬に関わる広範な化学空間を対象に、110万件以上の量子化学データをend-to-endで学習した機械学習型の古典分子力場である。この力場は、訓練データに含まれる元素を持つ分子であれば、任意の分子に対して力場が生成可能で、タンパク質-リガンド間の結合自由エネルギー予測など、創薬研究の多様な場面での応用が期待されている。本講演では、espaloma-0.3の概要と、その開発過程においてオープンサイエンスが果たした重要な役割について紹介する。
- 15:00 - 15:40
「産官学連携による疾患データベースの構築」
北島 貴司 (小野薬品工業株式会社)
創薬の成功確率向上のためにヒト検体を上手に活用するためには、臨床情報が付随し、品質管理された検体での情報取得が必要である。
そこで、国内製薬企業7社と研究7機関で構成される研究事業として、「ナショナルセンター・バイオバンクネットワークを基盤とする疾患別情報統合データベースを活用した産学官連携による創薬開発研究(GAPFREE4)」が立ち上がり、ナショナルセンター・バイオバンクネットワークが有する精神・神経および免疫炎症疾患患者検体のオミクス解析を実施し、臨床情報とともにデータベースに格納してきた。
本研究事業は2024年度末で約5年間の活動を終了し、企業ニーズを踏まえた独自の大規模データベースを計画通り構築した。今後、本成果を活用し、創薬研究が進展することを期待している。
- 15:40 - 16:20
「NVIDIA BioNeMo と Tokyo-1 コンソーシアムを活用した生成AI駆動型創薬 アプローチ」
長岡 和也 (アステラス製薬株式会社 デジタルX R&DX )
近年、創薬研究においてオープンソースの生成AIソリューションが世界的に急速に公開され、研究現場での活用も加速しています。当社ではこれらの動向を踏まえ、NVIDIA が提供する分子生成AI基盤 BioNeMo を活用しています。BioNeMo は分子やタンパク質データに特化して学習した大規模言語モデルであり、分子構造生成、配列解析、物性予測など幅広い応用が可能です。本講演では、その技術的特徴と応用事例を紹介するとともに、Tokyo-1 コンソーシアムのコミュニティ活動や高性能計算環境の活用も交え、生成AIが創薬研究にもたらす展望を議論します。
- 16:20 - 16:45
「第一三共におけるオープンソースの活用と、オープンサイエンスへの取組み」
国本 亮 (第一三共株式会社)
近年、創薬研究開発において効率化が求められる中、OSS(オープンソースソフトウェア)は先進性、柔軟性、コスト削減、及び共同研究の促進など多くの利点を提供している。本発表では、第一三共におけるOSSの活用とオープンサイエンス活動について紹介する。まず、クラウド計算環境上にOSSをWebツールとして展開し、研究者が気軽に利用できるプラットフォームを構築した事例を説明する。このプラットフォームは、社内の研究活動を加速させると共に、研究者同士のコラボレーションを促進した。次に、非競争領域におけるオープンサイエンスへの参画の意義や、企業が論文を発表することによって得られる多様なメリットについて触れる。技術やデータの共有がもたらす未来の可能性についても議論したい。
- 16:45 - 16:50 挨拶
講演会参加費参加申込み
(種別) (料金) 法人会員 無料 一般 個人会員A 無料 個人会員B ¥3,000 非会員(一般) ¥10,000 学生 学生会員 無料 非会員(学生) ¥1,000
キャンセルの場合、2025年11月21日(金)までにご連絡いただければ手数料を差し引いて返金します。
それ以降は講演会参加費のキャンセル返金はできません。
締切日(開催日一週間前)にコンビニ決済を選択すると5日間の支払猶予期間があるため、最長開催2日前まで支払いを延期できます。
ただし、支払いが完了しないと正式な参加申し込みとはならないため定員オーバーで参加できない可能性があることをご容赦願います。
参加費が無料の方も、キャンセルされる場合は、なるべく早くにご連絡ください。こちらでシステムから取り消します。
お問い合わせ
>>CBI学会会員管理および講演会登録ページ
※Zoom アプリは最新にしておいてください。
※参加登録をお済ませの方には、2025年11月24日(月)までに、Zoomウェビナーへの入室情報を電子メールでお知らせします。
上記期日までに届かない場合は、下記お問い合わせ先までご連絡ください。◆情報計算化学生物学会(CBI学会)事務局
TEL:03-6435-0458