«Japanese»   «English»
10月15日(月)      10月16日(火)      10月17日(水)

10月15日(月) 講演要旨

◆大ホール

<基調講演> 10:00-12:00
  Dr.Jun Wang (Beijing Genomics Institute)
  演題: Three million genomes project at BGI
  要旨: Breathtaking progress in DNA sequencing technology has made the costs dropping and throughput increasing in a lighting speed. With more organisms including human sequenced, flood of genetic data is being generated worldwide every day. Progress in genomics has been moving incrementally due to this revolution in sequencing technology. At the same time, large scale studies in exomics, metagenomics, epigenomics, and transcriptomics all become realistic suddenly. Not only do these studies provide the knowledge to basic research, but also immediate benefits to application. Scientists across many fields are utilizing these data for the development of better crops and livestock; for diagnostics, prognostics and therapies for cancer, and other complex diseases. BGI is on the cutting edge of translating genomics research into molecular breeding and disease association studies with belief that agriculture, medicine, drug development and clinical treatment would eventually enter a new stage with the understanding of genetic components of all the organisms. We are dedicating to three projects: 1) Million Species/Varieties Genomes Project aims to sequence a Million economically and scientifically important plants/animals and model organisms, including the breeds and the varieties. The project is best represented by the newly sequenced Giant panda, potato, macaca genome, as well as many resequencing projects. 2) Million Human Genomes Project, is focusing on large scale population studies and association studies, using whole genome or whole exome sequencing strategies. 3) Million Eco-System Genomes Project aims to sequence the metagenome and cultured microbiome of all kinds of environment, including the micro-environment in the human body.
   
Dr. Shawn Douglas (Wyss Institute for Biologically Inspired Engineering at Harvard)
  演題: Nanoscale construction with DNA
  要旨: The programmability of DNA makes it an attractive material for constructing intricate nanoscale shapes. One method for creating these structures is DNA origami, in which a multiple-kilobase single-stranded 'scaffold' is folded into a custom nanoscale shape by interacting with hundreds of short oligonucleotide 'staple' strands. I will talk about our efforts to realize demand-meeting applications of this method, including our recent development of nanoscale devices to mimic cell‐signaling stimulation carried out by our own immune systems.
 
<招待講演:医薬品開発における薬物動態研究の動向1 > 14:00-15:30
永井 尚美(医薬品医療機器総合機構)
  演題: 医薬品開発におけるIn silicoアプローチ ~創薬探索から臨床開発への橋渡しを中心に、審査の立場から~
  要旨: 薬物動態(Pharmacokinetics、PK)は、生体内での薬物の挙動を定量的に評価し予測するための応用学問である。治療薬物モニタリング等、臨床現場での医薬品の適正使用に活用されるだけでなく、有効かつ安全な医薬品の創製や使用方法を設定するために、医薬品開発においてもPKは必須の知識及び研究領域であるとの認識が定着している。 アカデミアのPK研究領域では、生理学的薬物速度論モデルやアニマルスケールアップの手法等、in vitro実験系や動物試験データにモデルを適用してin vivoへ外挿することが試みられ、研究成果も数多く報告されている。薬事承認においては通知で規定された試験成績を添付する必要があり、医薬品開発では、臨床試験や実験主体の創薬手法により、申請・承認に必要なデータを段階的に収集してきた。近年、必要最小限の実験データと既存の基礎情報を統合して臨床効果の定量的な予測を行う、或いは臨床開発への移行や臨床試験デザインに係る意思決定を行うといった目的で、医薬品開発のより早期の段階から、モデルやシミュレーションが積極的に活用されるようになってきた。例えば、創薬ターゲットに対する合理的なドラッグデザイン、PKや毒性プロファイルに基づく安全性予測、in vitro溶解挙動とシミュレーションによる消化管からの吸収予測やバイオアベイラビリティ改善、物性やPKプロファイルに基づく食事や併用薬の影響の定量的な予測等である。 このような評価手法は、開発期間の短縮、生産性向上、開発費用や使用する実験動物の軽減等、より効率のよい医薬品開発マネージメントに貢献すると考えられる。本発表では、新医薬品の開発に関する相談や審査経験を踏まえて、創薬探索から臨床開発への橋渡しを中心に医薬品開発におけるモデルやシミュレーションの活用について述べる。
   
菅野 清彦(旭化成ファーマ)
  演題: 薬物吸収予測のパラダイムシフト:メカニズムモデルによるin vitroデータの素因子解析とヒト予測
  要旨: 経口吸収シミュレーションは、医薬品開発の効率向上に貢献すると期待されている。これまでの方法では、in vitroデータを半経験的メカニズムモデルに直接入力していた。しかし、現在では、in vitroデータを素因子へ一度還元した後に、より生体を反映したメカニズムモデルに入力する方向へ移行しつつある。このことにより、薬物の分子構造から生体での吸収までを理論的に結びつけることが可能となり、また、種差、食事の影響、個体間差等のの予測が可能となってきた。本講演では、薬物経口吸収の各過程のモデル式を紹介した後、各素因子と化学構造との関連性やin vivo予測性について議論する。
   
原島 秀吉(北海道大学)
  演題: 多機能性エンベロープ型ナノ構造体の創製とナノ医療への展開
  要旨: 新しいPackaging Concept:我々は、遺伝子治療を成功へ導くための基盤技術として、ウイルスベクターに匹敵する効率を有し、かつ、ヒトへの適用が可能な人工遺伝子デリバリーシステムの開発を目的として、エンベロープ型ウイルスベクターに啓発されて、コア-シェル型の構造を基本形とする多機能性エンベロープ型ナノ構造体(MEND)を開発した。究極的なMENDは、体内動態と細胞内動態を制御するために、標的化機能、ステルス機能、細胞内動態制御能など、種々のナノデバイスをプログラムに従って機能できるようにナノ構造体に配置されている。
細胞透過性ペプチド:ナノ粒子の細胞内送達は、細胞が有するエンドサイトーシスという機構を利用するのが一般的であり、通常はクラスリン介在性エンドサイトーシス経路を通り、ライソゾームと融合してしまう。標的部位である細胞質あるいは核内へ到達するためには、この分解経路から脱出することが不可欠である。我々は、細胞透過性ペプチドであるオクタアルギニンでナノ粒子を表面修飾することにより、マクロピノサイトーシス経路を誘起し、効率的に細胞質へ到達できるR8-MENDの開発に成功した。
RNA/DNAワクチンへ:pDNAを核まで送達して治療を行う遺伝子治療は、薬物送達システムの究極的なゴールの一つと考えられる。DNAワクチンは、最も実用化しやすいと考えていたが、樹状細胞(DC)など免疫担当細胞への遺伝子導入には困難を極めた。HeLa細胞などの分裂細胞と比較して難攻不落であった。一方で初代培養肝細胞は、非分裂細胞でありながら、R8-MENDによる遺伝子導入は容易であり、なぜ、DCへの遺伝子導入が難しいのか、試行錯誤が続いた。我々は、ついにDCへsiRNA/pDNAを効率的に送達することに成功し、核酸によるワクチンの可能性を見出すことに成功したので、最新の研究成果を発表したい。
 
<招待講演:医薬品開発における薬物動態研究の動向2 > 16:00-17:30
堀江 透(ディ・スリー研究所)
  演題: 創薬研究におけるヒト薬物動態予測の重要性
  要旨: 医薬候補化合物の薬物動態特性は、その化合物固有の性質で、化合物が選択された時点で、すでにヒトでの薬物動態特性は決定されている。動物での薬物動態試験から医薬候補化合物を選択して、その後、臨床薬物動態試験の成績から開発中止を余儀なくされるケースは依然として起っている。それ故ヒト化モデル動物を用いた代謝試験が重要であり、ヒト化モデル動物から臨床薬物動態を予測する試験系の有効利用が望まれる。
 ヒト肝細胞を持つキメラマウス(PXBマウス)はヒトの薬物動態や薬物代謝研究の予測ツールとして開発された。PXBマウスは、肝障害と免疫不全を有するウロキナーゼタイプ・プラスミノーゲンアクティベーター・トランスジェニックSCIDマウス(uPA/SCIDマウス)に脾臓経由でヒト肝細胞を移植して作製されたヒト化モデルマウスである(PXB マウス)。PXBマウスはヒトのPhase IおよびII酵素 、トランスポーターの遺伝子が発現している。一方、ヒト人工染色体(HAC)ベクターを用いてヒトCYP3A遺伝子クラスターを導入したCYP3Aヒト化マウスが作製されている(CYP3A4-HACマウス)。このCYP3A-HACマウスでは肝臓と小腸に特異的にCYP3A4が発現している。PXBマウスに比べて、特にヒト小腸CYP3A4代謝の予測に有効である。したがって、創薬代謝研究を行う上で両ヒト化モデル動物の使用は医薬候補化合物の選択および研究開発の効率化には欠かせない。
   
多田幸雄 (東京大学創薬オープンイノベーションセンター)
  演題: 薬物動態を考慮したリード化合物の最適化
  要旨: 望ましい医薬品候補化合物を得るためには、リード化合物の最適化のプロセスに於いて薬物動態を考慮する必要がある。生物薬剤学分類システム(BCS)はFDAにより提供された、腸からの薬物吸収を予測する指針である。このBCSによる化合物の吸収予測は、水溶解度と透過性によって規定される。しかし、化合物の親油性に依存して生物活性を向上させたと同時に、水溶解度が減少し易い傾向にある。従って、化合物がBCS クラスII(高い透過性、低い溶解性)に属さない様に常に注意する必要がある。さらに、より安全な医薬品候補化合物を得るためには、化合物の物理化学的性質に基づいて、出来る限り毒性の低い化合物をデザインする事も重要である。本講演では、抗アレルギー剤:アイピーディ(Splatast tosilate)と抗腫瘍剤:TAS-102(フェーズ III)の開発における、薬物動態を考慮したリード化合物最適化について紹介する。
 

◆小ホール

<招待講演:データベースと情報統合 > 16:00-17:30
中村 保一(国立遺伝学研究所/総合研究大学院大学)
  演題: (メタ)ゲノム情報を基盤とした微生物DB・植物DBの統合
  要旨: JSTに拠点をおくバイオサイエンスデータベースセンター(NBDC;National Bioscience Database Center)のライフサイエンスデータベース統合推進事業に採択されたデータベースの統合化に向けた二つの「統合化推進プログラム」の進捗状況について報告する。ひとつは東工大、遺伝研、基生研による「ゲノム・メタゲノム情報を基盤とした微生物DBの統合」であり、もうひとつはかずさDNA研と新潟大による「ゲノム情報に基づく植物データベースの統合」である。いずれもゲノム情報を基盤とし、それぞれの研究領域での知識の統合を目指すものである。
   
片山 俊明(ライフサイエンス統合データベースセンター)
  演題: DBCLSにおける情報統合技術開発
  要旨: ライフサイエンス統合データベースセンター(DBCLS)では、その名の通り生命科学データベースの統合を目指した技術開発を行なっている。医学生物学のデータベースは、近年のシーケンス技術の向上による配列データ量の爆発的な増加だけでなく、多種多様な個別データに分かれていることも特徴である。今後次々と産出されるデータを解釈するためには、これら既存の知識データを統合的に利用できる環境を整えていく必用がある。DBCLSでは、データの集積・取得・変換などに必要なサービスの構築を進めてきている。2008年からは、国際開発会議BioHackathonの開催などを通じて、ウェブ・サービスの標準化や、様々なデータ間を意味的に統合するための技術開発を進めている。とくに近年では、セマンティック・ウェブなど最新の情報統合技術を活用したデータベースの構築運用を目指しており、恒久的に利用できるIDとしてのURI設計、ゲノム情報や環境情報などの統合に向けたデータモデルの構築、アノテーションに必要なオントロジーの開発などにフォーカスしている。
   
福井 一彦、田代 俊行、矢葺 幸光、浅井 潔(産業技術総合研究所生命情報工学研究センター)
  演題: プラットフォームを用いた解析ツールの統合・連携
  要旨: ライフサイエンス研究分野では、測定装置のハイスループット化により膨大なデータが蓄積され、その細分化、専門化に伴い様々なデータベース、解析ツール、予測ソフトウェアが開発されています。これらを有効かつ効率よく利用し知的情報を得るには、解析の自動化など様々な課題を克服する必要があります。我々はプラットフォームを用い、蓄積されたデータ解析のため一連の解析処理の流れを定義することにより、効率的に短時間に実行可能とするワークフローの技術開発を進めています。 このプラットフォームを用い、ノード化されたCBRC独自の解析ツール・ソフトウェアのプログラム群や外部ツール及びデータベース等をインタラクティブに接続し、独自の解析ワークフローを構築し、その結果を可視化することが可能です。この解析ツールのサービスはSOAP通信に対応しており、ローカルPCによる処理と計算機パワーが必要とされる計算処理の部分を切り分けています。またDBのRDF化に伴い、開発した高度な解析ツール群を広く利用可能とするために、セマンティック技術に対応したSADI(Semantic Automated Discovery and Integration)フレームワークを利用して、解析ツールにRDF入出力機能を追加し、連携型DBと組み合わせた大規模解析を可能とする解析サービスやツール群のオントロジー開発を行っています。
Availability: http://togo.cbrc.jp/en_index.html
Acknowledgements: This research is carried out through participation in the Life Science Database Integration Project implemented by Japan Science and Technology Agency (JST), Japan
   
五斗 進(京都大学化学研究所)
  演題: ゲノムネットにおけるデータベースとツールの統合
  要旨: 1992年から京都大学でサービスしているゲノムネットでは、当初からサービスしているDBGET分子生物学データベース統合検索システムをはじめ、1994年からのデータベース間リンク情報データベースLinkDB、1995年からのKEGGと多様なデータベースの開発と統合を進めている。DBGET/LinkDBとKEGGは以下の二つの観点から対比できる。 まず、DBGET/LinkDBが既存のデータベースを組み合わせて統合するのに対し、KEGGは既存のデータベースの情報も使うが基本的にはすべて一つのシステム内のデータベースとして完結している。また、DBGET/LinkDBが単純なキーワード検索とリンク検索のみを提供するのに対して、KEGGはキーワード検索よりもむしろデータをブラウズしたり、アミノ酸配列検索、 化学構造検索、パスウェイ検索などのより応用に特化した検索と解析ツールの提供に力を入れている。そういう意味で、DBGET/LinkDBは緩い統合、KEGGは強い統合を指向しているとも言える。本講演では、このような対比に着目してゲノムネットにおけるデータベースとツールの統合の現状について紹介したい。
   
>> <<