2001年大会のポスター優秀賞の選考と発表

本年度の年会よりポスター発表を充実するために、ポスター優秀賞を各分野から1〜2件 選び表彰することになりました。今回の選考は、CBIジャーナル編集委員会で行うことになり、 各委員がそれぞれの分野から1つづつ推薦し全委員の合意で選考しました。残念ながら 第6分野は発表件数が少なかったため該当ポスターはありませんでした。

以下に各分野の選考経過と受賞ポスター名を発表します。


1. 分子計算

1-6   静電場トポロジーによる新しいグラフィックスとアミノ酸錯体への応用
半田 享, 柏木 浩, 高田 俊和
(九州工業大学情報工学部, NEC基礎研究所)

1-10  NMT阻害剤のヒト/カンジダ選択性:蛋白質静電場計算による説明
高島 一,小田 晃司,和田 久弥,北村 一泰
(大正製薬株式会社)

2.分子認識, QSAR 

2-9   集合的Fingerprint− Modal Fingerprintによる複数の活性分子からの情報抽出とVirtualScreening への応用
小田 晃司,山野辺 進,高岡 雄司,北村 一泰
(大正製薬)

3. バイオインフォマティクス 

3-4   Gタンパク結合受容体のモデリングデータベース
岩舘 満雄, 川北 栄継, 梅山 秀明
(北里大学薬学部生物分子設計学教室)

3-6   遺伝子発現量情報に基づくクラスタの比較とその可視化手法に関する研究
加納 真, 堤 修一, 西村 邦裕, 油谷 浩幸, 広田 光一, 廣瀬 通孝
(東京大学工学系研究科, 東京大学先端科学技術研究センター, 東京大学情報理工学系究科)

4. 医薬品毒性研究支援

4-2   3次元医薬品構造データベースの開発とインターネットへの公開
土橋 朗, 倉田 香織, 濱田 真向
(東京薬科大学薬学部)

4-6   薬物代謝物(A→B→C・・・・)の組織濃度推移予測プログラムの開発
深野 駿一
(東京都立衛生研究所 毒性部 薬理研究科)

5.スクリーニングデータ解析

5-8   酵母DNAマイクロアレイを用いたDMSOの毒性評価
村田 善則, 長谷川 実加, 岩橋 均, 小松 泰彦
(産業総合研究所 特許生物寄託センター)

 

<講評>

第1分野:分子計算

本分野は、新しい方法が簡単に出てくるような分野ではないため、従来の分子計算方法を うまく改良した研究や、分子計算を応用して分子設計を行った研究に評価が集まり、上記 の2ポスターの受賞となりました。なお、これら以外にも、MD専用計算機の丁寧な性能評 価を載せたポスター1-3(Okadaら)や、経験的MO計算を用いて酵素を解析した試みの1-5 (Ohnoら)など、興味深い発表がいくつもありました。

第2分野:分子認識, QSAR 

本分野では、新しい方法論の開発、あるいは新たな知見を与えるような応用、 を審査の第一の基準と致しました。 2-9は、Modal Fingerprintの概念をVirtualScreeningにうまく利用すること により、ユニークで効率の良い抽出を実現したということで、受賞となりま した。なお、次点には、教科書的で分かり易い応用ということで、2-8が選 ばれました。

第3分野:バイオインフォマティクス 

3-4. Gタンパク結合受容体のモデリングデータベース
創薬ターゲットとして最重要視されているGPCRについて、ウシロドプシンの立体構造をもとに全自動でモデルを構築するシステムに関する研究。基礎となるGPCR配列データは RDBMS化されており、CASP4で良好な実績を残したオリジナルモデリングソフトFAMSを用いてのシステムである。ゲノム創薬に対する有用性と将来性からポスター賞受賞となった。

3-6. 遺伝子発現量情報に基づくクラスタの比較とその可視化手法に関する研究
ポストゲノム配列時代の研究では網羅的な実験から生じる大量のデータをいかにして表示し、解析・解釈するかが重要な課題となっている。本発表では、マイクロアレイから得られるクラスタ化された遺伝子群の解析に、クラスタ間の相関を見るマップという概念を導入して新しい情報を引き出すとともに、その可視化に没入型ディスプレイシステムの開発を行っている。学際的でユニークな研究であるとの位置づけからポスター賞受賞となった 。

第4分野:医薬品毒性研究支援
もともと研究の「支援」を目的とする地味な分野であり、その評価は、役に立つか否か、実際にどの程度完成しているか、を選考の基準にした。この意味で受賞論文は、大変優れていると判断した。さらなる発展を期待したい。できればCBIのグランドチャレンジとして参加されることも検討していただきたい。また、Toxicogenomicsのような話題の発表もあったが、まだConcept Paperの域を脱していないように見えた。今後の展開を期待したい。本分野はCBI学会の中核となるべき分野であり、より多くの論文が投稿されることを願っている。
第5分野:スクリーニングデータ解析
5-8. 酵母DNAマイクロアレイを用いたDMSOの毒性評価 凍結保護剤や疎水性試薬の溶媒として広く用いられているDimethyl sulfoxideに対する細胞全体のグローバルな応答をDNAマイクロ アレイを用いて初めて報告したものとして評価できる。酵母を DMSO処理した後、誘導、抑制された遺伝子を解析、分類すること でDMSOの毒性評価を行なっている。

第5分野全体としては、15題の発表があったが、マイクロアレイの バイオアッセイ系への適用が多かった。

第6分野:WWWなど
この分野は、情報(工)学として、何らかの新しさをもった仕事を期待しているが、(Journalの編集委員など)関係者以外からの投稿がほとんどなかったので、選考の対象としなかった。

なお受賞の特典として、ジャーナルに優先的に論文を掲載することと投稿料を無料に しますので、ぜひ論文としてジャーナルに投稿をお願いします。
これらの論文は年会記念号としてVol.1のNo.4(12月末予定)に掲載を予定していますので、 投稿締め切り期日は9月末になります。

                       

2001年8月1日
                        CBIジャーナル編集委員会