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2005年大会

「Chem-Bio Informatics in Post Genome Era」

プログラム・講演者要旨・ポスター発表要旨


理化学研究所 ゲノム科学総合研究センター 小長谷 明彦


[総論]

CBI研究会発足25周年を記念して、第25回記念全国大会(CBI学会としては第5回大会)を8月24日から26日にかけて理研横浜研究所交流棟ホールにて開催した。本大会ではポストゲノム時代におけるCBI学会の重要課題として、分子コンピューティング、薬理ゲノミクス、薬物動態を取り上げ、それぞれ、同分野の第一人者であるDr. Richard Friesner(Columbia Universit)、Dr. Allen Roses(GlaxoSmithKline)、Dr.Yuichi Sugiyama (University of Tokyo)にキーノートをお願いした。キーノートを含め7件の招待講演と9件の口頭発表、2件のチュートリアル講演と2件の併設ワークショップ、80件のポスター発表、3件のランチオンセミナーおよび14件の企業展示を行い、3日間を通して、総計256名の大会参加者を得た。講演およびポスター発表を全て英語にしたという今回の国際会議形式が、CBI学会の活動の国際化の一助となれば幸いである。

[全国大会の構成について]

CBI全国大会はCBI学会の活動の総括であり、学会全体を俯瞰できるものでなければならない。このような観点からCBI2005記念大会では、CBIの注目研究領域と先端トピックスとのバランスに配慮した。CBI学会が対象とする創薬研究は分野が多岐にわたり、また、研究テーマも、日々刻々と変化する最先端領域といっても過言ではない。ともすれば、境界領域研究である先端トピックスに目が行きがちであるが、CBIとしての基盤研究を失うと根無し草になりかねない。むしろ、全国大会では基盤研究に重点を置くべきと考え、CBIの注目領域を中心に技術セッションおよびポスター発表を構成し、先端トピックスについては併設ワークショップとして独立させることにした。ワークショップとして独立させることにより、話題となっている研究テーマに注力できたと考えている。2005年度大会では、immunoinformaticsとgenome medical informaticsという2つのワークショップをそれぞれ理研GSCおよび日本医薬情報学会に企画して頂いた。それぞれ100名弱の参加者があり、ワークショップ企画としては成功だったと考えている。

一方、基盤研究については、CBIの注目領域である6つの研究領域毎にポスターを公募し、プログラムとしては、キーノート、招待講演、口頭発表、ポスター発表が連続的につながるように配慮した。また、曜日毎に、分子レベル、細胞レベル、個体レベルにおける創薬研究を集め、全体としてCBI領域がカバーできるように配慮した。具体的には、初日は分子計算を中心とした研究発表について、中日は薬理ゲノミクスを中心とした大規模データ解析およびバイオインフォマティクスについて、最終日は薬物動態を中心として、医療応用や疾病モデルまでを視野にいれた個体レベルでの創薬研究が集まるように配慮した。大会の規模にもよるが、CBIのような境界領域については、技術分野での分類よりも、対象レベルでの分類のほうが技術分野間での交流に役立つのではないかと考えている。

[チュートリアル講演]


Dr.Tsuguchika Kaminuma (Hiroshima University)とDr.HIroki Shirai(Astellas Pharma Inc.)による2件の講演が行われた。Kaminumaからは、過去25年間のCBI研究会での活動を振り返り、何を目指して活動し、何ができて何ができなかったか、さらに、これから何をすべきかについて物理、化学、生物、情報の各領域を横断した壮大なる構想についての講演があった。Shiraiからは、創薬の現場において、バイオインフォマティクスがどのように活用されているのか、どのような技術が求められているかについて利用者の立場からの講演があり好評を得た。

[キーノート:分子コンピューティングと分子認識]


報告

[キーノート:薬理ゲノミクス]


Dr. Allen Roses(GlaxoSmithKline)よりGSKにおけるファーマコゲノミクス(PGX)の現状ならびに今後の方針ついて紹介があった。肥満、アルツハイマー症などの疾病に対するゲノム創薬の一環として、1997年よりGSKでは大規模なファーマコジェネティクス(PGX)プロジェクトを推進し、日本人、白人、アフリカ人、ヒスパニック、(インド人)など5つの人種グループごとに3000人の遺伝的変異を調べている。疾病毎に1000人の患者と1000人の健常者の間で、大規模なSNP解析(>7000SNPs)を行い、HTS可能なtractable遺伝子(>1500)と疾病とのマッピングを行っている。現在、喘息、肥満、糖尿病などの20のcommon diseaseに対して統計的に有意な候補遺伝子(疾病毎に数十)の選別を行い、50の遺伝子について原因遺伝子を特定した。糖尿病の場合、20の候補遺伝子があるが、それらが正しい確率は50パーセントという。


[Technical Session : Molecular Computation and Molecular Recognition ]


分子コンピューティング分野では、Dr.Roy S Kimura(Bristol-Myers Squibb Company), Dr.Yutaka Akiyama(AIST)による2件の招待講演と3件の一般講演があった。Dr.Kimuraからは創薬においてQM/MMのような最先端分子シミュレーション技術がどのように分子設計に活かせるかについて、Dr.Akiyamaからは高性能計算機を活用した分子ドッキングシミュレーションについての最先端研究が紹介された。一般講演からは、HIV-1プロテアーゼの分子シミュレーション(T. Hoshino, Chiba University)、蛋白質-蛋白質結合部位予測(G. Terashi, Kitasato University)、Ras-Ral GDS複合体の分子シミュレーション解析(N. Futatsugi, RIKEN)に関する研究が報告された。

[Technical Session : Bioinformatics and Genome-wide Experimental Data Analysis]


バイオインフォマティクス分野では、Dr.Hiroaki Aburatani(Univ. of Tokyo), Dr. Hiroaki Ueda(RIKEN CDB)による2件の招待講演と3件の一般講演があった。Dr.Aburataniからはマイクロアレイを用いたゲノム多様性の高速解析について、Dr.Uedaからは哺乳動物の体内時計に関するシステムバイオロジーからのアプローチについて最新の研究成果の報告があった。一般講演からは、酵母プロテオームの電荷分布解析(R. Ke, Nagoya University)、網羅的実験解析のための文献からの概念ネットワーク抽出(A. Koike, University of Tokyo)、cellフリーシステムにおける生合成系の律速要因の解析(N. Fujita, University of Tokyo)に関する研究が報告された。

[Technical Session : Drug Design and Toxicology, Disease Mechanism and Control Model]


一般講演として、CYP3A4と生体化合物との相互作用に関する文献からの情報抽出(C. Feng, Parmaceutical Kyoto University)、データグリッド技術を用いた公的化合物データベースからの薬物候補探索(G. Kawamura, Osaka University)、仮想スクリーニングにむけた分子ドッキングソフトウエアの性能比較(K. Onodera, RIKEN)に関する研究が報告された。

[Immunoinformatics Workshop]


Immunoinformatics Workshopは、Christian Schoenbach (RIKEN GSC)により企画され、免疫情報処理の中心的課題であるワクチンデザイン(Nikolai Petrovsky, Anne S DeGroot)、統合データベースの構築(Werner Mueller)、遺伝子複製および翻訳時の多様性(Chritian Shcoenbach)、植物の免疫機構(Edgardo E Turin)について都合5件の講演があった。


[Genome Medical Informatics Workshop]


Jun Nakaya (Kobe University)により企画され、Hiroshi TanakaによるGenome Medical Informaticsに関するキーノートをはじめとして、Hiroshi MizushimaおよびJun Nakayaによる医療におけるゲノム情報の利用に冠する講演と4人の講演者によるパネル討論が行われた。

[ポスター発表]


ポスター発表については、従来通りCBIの関心領域である、(1)分子計算(2)分子認識(3)バイオインフォマティクス(4)ゲノムワイド実験データ解析(5)医薬品研究と毒性研究支援システム(6)疾病メカニズムと制御モデルの6つの領域についてポスター募集を行い、80件の投稿があった。今回、CBI論文編集委員会により下記のポスター賞が選定された。

2005年大会ポスター賞

最優秀賞 1報
 
Carlos A. Del Carpio, etal:
Genome Functional Analysis based on Systematic Map of Protein Interactions

優秀賞  4報

Motoi Tobita, etal:
An in Silico discriminant model constructed for HERG potassium channel inhibitors

Chunlai Feng, etal:
Extraction of Information on Chemicals-CYP3A4 Interactions from Literature

Akifumi Oda, etal:
Systematic comparisons of consensus scores for computational ligand-docking

Asako Koike, etal:
Semi-automatic interpretation of experimental results based on conceptual network


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