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フォーカストセッション
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▼FS01 「AI創薬・メゾスコピック化学討論研究会」立ち上げ会 (1) 10月28日(火)14:00-15:30 [桃源]
▼FS02 Meet the Legend 10月28日(火)14:00-15:30 [研修室]
▼FS03 基盤モデルの最前線―創薬・生命科学分野にもたらすインパクト 10月28日(火)14:00-15:30 [401]
▼FS04 先端的計測技術 10月28日(火)13:00-16:00 [407]
▼FS05 コホートxリアルワールドデータ研究フォーラム 10月28日(火)14:00-15:30 [406]
▼FS06 医療データAI解析実践フォーラム 10月29日(水)14:00-15:30 [桃源]
▼FS07 計算ADMET研究会: in silicoアプローチによる薬物動態・毒性予測の最前線 ~PBPKから標的同定まで~ 10月29日(水)14:00-15:30 [研修室]
▼FS08 「AI創薬・メゾスコピック化学討論研究会」立ち上げ会(2) 10月29日(水)14:00-15:30 [401]
▼FS09 分子ロボティクス研究会「分子ロボットの動作設計基盤」 10月29日(水)14:00-15:30 [407]
▼FS10 計算科学研究者のキャリアの歩み方~多様なキャリアパスから学ぶ~ 10月29日(水)14:00-15:30 [406]
▼FS11 計算科学が支える毒性予測:幹細胞×AIの挑戦 10月30日(木)14:00-15:30 [研修室]
▼FS12 「AI創薬・メゾスコピック化学討論研究会」立ち上げ会(3) 10月30日(木)14:00-15:30 [407]
▼FS13 オミックスの原理に関する原理 10月30日(木)14:00-15:30 [406]
FS01 [桃源] 10月28日 14:00-15:30
 
「AI創薬・メゾスコピック化学討論研究会」立ち上げ会 (1)
 

モデレーター :湯田 浩太郎(株式会社インシリコデータ)、池田 和由(理化学研究所)

「AI創薬」、この言葉は最近よく聞かれるようになった。従来からのコンピュータ支援創薬やIT創薬という計算力や情報処理中心の創薬と異なり、創薬自体にAI(人工知能)を取り入れる、あるいはAI支援により創薬を新たなステップに導く。これが「AI創薬」への期待事項であり、AIの取り込みにより創薬上の様々な問題解決が期待でき、新たなチャレンジを実施できるという可能性が注目されている。

 従来からのコンピュータ支援創薬やIT創薬は、コンピュータの高速計算やグラフィック表示、また様々な情報のデータサイエンス的処理等を主体として、現在はかなり完成度の高いものとなっている。このような状態下で、AIという新たな技術が立ち上がり、かなり高度な事案に対する処理が可能となってきた。AIの最大の特徴は、従来の高速計算や情報処理ではなく、知的且つ創造的な内容を処理できることである。この能力は、従来からのコンピュータやIT処理では発揮しえない能力であり、創薬研究において知的、且つ創造性の活用は現代の創薬においては極めて重要であり、これまではブラックボックスの状態であった。このブラックボックスの開放にAIの活用がある。この観点で、AI創薬への創薬研究での期待は大きい。

 このような状況を鑑みて「AI創薬・メゾスコピック化学討論」研究会がCBI学会に立ち上げられた。今後のAI創薬を討論する場として期待していただきたい。

FS01-01
湯田 浩太郎(株式会社インシリコデータ)
「AI創薬・メゾスコピック化学討論」研究会設立報告
「AI創薬」概論展開:データサイエンス的AI創薬および深層学習・生成型AI創薬について
  「AI創薬・メゾスコピック化学討論」研究会設立報告を行う。
「AI創薬」は現在AIの種類により大きく二種類に分類される。一つはデータサイエンスのAI機能を用いて展開される「AI創薬」であり、残る一つは深層学習・生成型AIを用いた「AI創薬」である。これら二種類の「AI創薬」について様々な観点で解説を行う。個々の「AI創薬」については実施可能内容や技術的な展開等で大きな差異が存在する。これらを明確にすることが、「AI創薬」の展開に極めて重要であり、正しい研究を行うことが可能となる。
   
FS01-02
坂田 恒昭(大阪大学共創機構)
 
   
FS01-03
池田 和由(理化学研究所)
 
   
FS02 [研修室] 10月28日 14:00-15:30
 
Meet the Legend
 

モデレーター :渡邉 博文(株式会社ウィズメーティス) 、宮野 奈津美(帝人ファーマ株式会社)

日本のバイオインフォマティクスや創薬研究を牽引してきたレジェンドを講師に迎える本企画も、今年で第4回を迎えます。今回ご登壇いただくのは、構造生物学およびStructure Based Drug Designの分野で長年にわたり第一線で活躍されている、上村みどり先生です。

上村先生は東京工業大学博士課程修了後、アカデミア・産業界を通して精力的に研究を展開され、特に帝人ファーマ株式会社においては30年以上にわたり創薬研究に従事されました。現在は、CBI研究機構・量子構造生命科学研究所の所長としてご活躍されています。また、日本学術会議連携会員や文部科学省、AMED、CrSJ など多くの公的機関における委員を歴任され、日本のライフサイエンス研究基盤の強化にもご尽力されています。本講演では、「創薬は究極の異分野融合である」という視点から、構造生物学の進展とその創薬応用についてご講演いただきます。疾患ターゲットの立体構造に基づくデザインにより、薬剤の選択性と安全性を高めるためのアプローチや、放射光を用いたX線解析、さらには近年急速に発展しているクライオ電子顕微鏡(Cryo-EM)の重要性について解説されます。また、創薬研究における最大のボトルネックともいえる臨床試験以降の課題を踏まえ、生理的条件に近い構造取得や、生体内ダイナミクスの理解を通じて創薬成功確率を高めるための統合的戦略についてもご提案いただきます。異分野をつなぎ、リスクを乗り越えて「患者のもとへ薬を届ける」ために必要な科学の力と意志について、豊富なご経験に裏打ちされたご講演から深い示唆を得られるまたとない機会となっております。

FS01-01
上村 みどり(CBI研究機構量子構造生命科学研究所)
「Integrated Structural Biology in Drug Discovery」
  創薬は究極の異分野融合が必要である。材料の分野で製品を生み出すことと異なるのは、体力の弱っている病人の体内に直接作用する製品=薬を生み出すという点であり、創薬をするにはまずその現実を受け止め、志を持って挑戦しようとする人だけが官民問わず取り組めるのだと思う。当然、薬剤投与による副作用等、安全性の確保は念には念を入れるので、製品化までの速度は、他の業種の製品に比べて格段に遅くなる。数えきれないハードルがあって、そこをすべてクリアしないと、必要な患者様のもとには製品は届かない。これほどリスクのある製品化はほかに例がない。歴史的には、これら副作用を少しでも軽減するために、構造生物学が創薬に取り入れられてきた。いわゆる疾患ターゲットの3次元構造を基にデザインすることで、究極の選択性を付与することにより、副作用を軽減させることを目指している。そういった意味で放射光を用いたX線解析や、近年発展のめざましいCryo-EMの膜タンパク質等に対する構造取得に果たす役割は今後も絶大である。しかしこれらは創薬の上流にすぎない。時間もお金もかかるのは、動物を用いた前臨床試験後のヒトでの臨床試験以降である。つまり、生理的状態に少しでも近い状態の立体構造を取得しその構造をもとにデザインし、その成功確率を高めるため、生体内のダイナミックスも含め、あらゆる手法を融合させての薬剤創出を提案する。
   
FS03 [401] 10月28日 14:00-15:30
 
基盤モデルの最前線―創薬・生命科学分野にもたらすインパクト
 

モデレーター :牛山 文仁(SyntheticGestalt株式会社)

近年、AIの飛躍的な進展により、創薬をはじめとするライフサイエンス分野においても、基盤モデル(Foundation Model)の重要性が急速に高まっている。膨大かつ多様なデータを学習した基盤モデルは、多岐にわたる応用を可能にし、従来の研究プロセスを根本から変革しつつある。
本セッションでは、創薬および生命科学分野における基盤モデル活用の最前線について、最新の研究成果や応用事例を交えて紹介する。4名の講師が、それぞれの専門領域から基盤モデルの可能性や今後の展望を提示し、参加者と共にその意義と未来像を深く議論する場としたい。

FS03-01
佐伯 憲和(東京科学大学)
「シングルセル基盤モデルが導く超複雑多細胞組織の創出」
  iPS細胞などの多能性幹細胞を利用した組織構築技術により、「オルガノイド」と呼ばれる多細胞から成る臓器様構造物の形成が可能となっている。一方で、既存の生物学的知見に基づく実験設計では再現が困難なレベルの超複雑性が障壁となり、実際の生体臓器が有する機能や構造的特徴、細胞種の多様性などを精緻に模倣するには至っていない。この課題の克服には、多様な細胞が有する分子プログラムや細胞間情報伝達を高解像度で把握・解釈することが鍵となる。近年、生成AIの急速な進展を発端に、シングルセルゲノミクスによる網羅的データと基盤モデルの融合により、遺伝子間ネットワークの関係性と生物学的機能を高度に解釈することが可能であることが示されてきた。そこで本講演では、最新のオルガノイドエンジニアリング(ウェット)とシングルセルゲノミクス・基盤モデル(ドライ)の活用事例に焦点を当て、オープンワールドデータに基づく仮想実験システムを通じて、新たな複雑多細胞組織のデザインを目指す研究の将来展望について議論する。
   
FS03-02
Nicholls Joel(SyntheticGestalt株式会社)
"10 Billion Compound Pretrained Foundational Model for Drug Discovery"
  The process of drug discovery remains extremely costly, time-consuming and prone to high attrition rates. A substantial proportion of clinical trial failures (estimated at 40-50%) [1] stem from poor safety profiles, or lack of efficacy, and this indicates certain fundamental challenges in the early stages of discovery, including target validation and the identification of truly effective lead compounds. Predicting molecular properties in early stages enables prioritization of candidate compounds which have a higher chance of success in clinical trials. Addressing this challenge, we introduce a novel foundational large molecular model pre-trained on an extensive dataset of approximately 10 billion chemical conformers. The model transforms compounds to an embedding which can be used for a broad range of property prediction tasks.
Our methodology leverages Pseudo Multi-Parameter Persistent Homology (Pseudo-MPPH) to generate rich topological descriptors from 3D molecular conformations. The Pseudo-MPPH features are stochastically masked in pre-training and fed to a specialized transformer-based architecture, which learns to reconstruct the original unmasked Pseudo-MPPH features by using a self-supervised reconstruction loss. Through training on 10 billion diverse chemical conformers, the underlying structural syntax governing molecular structure is learned. The wide variety of data in this process allows our foundational model to develop rich, generalizable representations that capture fundamental chemical principles, moving beyond simple correlations within specific datasets.

[1] Sun D, Gao W, Hu H, Zhou S. Why 90% of clinical drug development fails and how to improve it? Acta Pharm Sin B. 2022 Jul;12(7):3049-3062. doi: 10.1016/j.apsb.2022.02.002. Epub 2022 Feb 11. PMID: 35865092; PMCID: PMC9293739
   
FS03-03
山岸 純也(Preferred Networks株式会社)
「創薬におけるニューラルネットワークポテンシャルの応用」
  Neural Network Potential (NNP; 機械学習ポテンシャル)は、量子化学計算に基づくエネルギーや力などを効率的かつ精度よく再現することを目的とする機械学習モデルで、分子シミュレーションの分野で注目を集めている。特に材料科学分野において、その進展は顕著であり、新たな材料設計や特性予測において重要な役割を果たしている。弊社は、96元素に対応可能なユニバーサルなNNPをENEOS株式会社と共同開発し、「MatlantisTM」の名称で材料分野の企業に提供しているが、創薬分野における応用は限定的である。
NNPはその計算速度や精度の高さが報告されているが、ドラッグライクな低分子化合物の多様性に対してどの程度精度を保証できるかは未知数である。とくにイオン性化合物に関しては、昨今の技術進展により計算可能となったばかりである。そこで本研究では、新たにイオン性化合物に対応したNNPを構築し、多様なドラッグライクな化合物に対するNNPの性能を詳細に検証した。またNNPはその優れた計算速度から、Free Energy Perturbation (FEP)の前処理として各化合物の力場パラメーターを改善する目的での応用も可能である。本研究では、NNPを用いて力場パラメーターを改善することがFEPの精度にどのように寄与するかについても調査を行った。
NNPの創薬への応用はまだ模索段階にあるため、本講演を通じてその可能性を探り、創薬分野への活用をさらに追求していきたい。
   
FS03-04
寺田 央(アリヴェクシス株式会社)
「ModBindシミュレーション技術が可能にする、高質・大量のシンセティックデータによる次世代創薬AIコンセプト」
  近年、大規模なデータで学習させたAIを利用して創薬研究を行う「AI創薬」に大きな期待が集まっている。ただ、特に創薬標的への作用強度などに代表される薬効薬理データについて一般に入手可能な学習データは、多様なプラットフォームで生成されている上、エラーも多く、また再現性が低いなどの様々な課題があり、現時点では創薬におけるAIの持つ潜在能力は十分に発揮されていないと考えられる。 他方で、シミュレーションが作るシンセティックデータによるAI学習は、その均一性や正確性、また量的な面から、自動運転や品質管理など多くの分野ですでに実用化されており、AIの性能を飛躍的に上げて来た。そのため、創薬分野でも同様な効果が期待されるものの、これまでは、質と量を兼ね備えたシミュレーション手法がなく実現には至っていなかった。
我々はそのような背景の中我々は、既存の最新の実用的シミュレーション手法に比べ、数百から数千倍高速で高精度、かつリファレンスデータの不要な革新的な化合物活性予測シミュレーターであるModBindを開発した。本セッションでは、この技術の概要・特徴と、AI創薬への応用について議論したい。
   
FS04 [407] 10月28日 13:00-16:00
 
先端的計測技術
 

モデレーター :多田隈 尚史(上海科技大学)、 石田 誠一(国立医薬品食品衛生研究所 / 崇城大学生物生命学部)、
        藤田 聡史(産業技術総合研究所 生命工学領域 先端フォトニクス・バイオセンシングOIL)

このセッションは通常枠より早く13:00に開始します

近年、抗体医薬品、核酸医薬品などのバイオ医薬品の開発が盛んである。生体高分子をベースにしたこれらの医薬品はより複雑な分子作用機序や分子動態を示すので、開発においては、その計測や評価モデル系構築が鍵となる。本フォーカストセッションでは、気鋭の研究者に御発表いただく。前半は高感度・高精度な生体計測に関して、後半は細胞の操作に関して、広く御討論いただきたい。
 前半2題は、高感度・高精度な検出について、ご発表いただく。まずは次世代シークエンス(NGS)技術を基盤とした、蛋白質翻訳の網羅的解析に関して、岩崎信太郎先生(理研)からご発表いただく。続いて、五十嵐龍治先生(東京科学大学/QST)より、蛍光ナノダイヤモンドを用いたナノ量子センサーに関してご紹介いただく。
 後半の4題は、新規の薬物動態・安全性の評価系として生体計測と連携が期待される臓器モデルの構築や生体計測について、ご発表いただく。はじめに出口清香先生(東京科学大学)より、マイクロ流体デバイスを用いた腸管機能の計測と疾患研究への応用に関してご発表いただく。川端健二先生(医薬基盤・健康・栄養研究所)より、ヒトiPS細胞から作製した次世代型血液-脳関門(BBB)モデルの構築に関してご発表をいただく。そして、山崎大樹先生(国立医薬品食品衛生研究所)より、iPS心筋を使った心毒性評価の画像解析の話題を御紹介いただく。最後に、もう一題、御発表いただく予定である(演者未定)。
 前半でご紹介いただく高感度・高精度な生体計測技術と、後半の臓器モデルを活用した生体計測との連携と、新規の薬物評価系への展開に関して広く御討論いただきたい。

FS04-01
【13:00-13:30】
岩崎 信太郎(理化学研究所開拓研究本部/東京大学新領域創成科学研究科)
「リボソームプロファイリング法の最新技法」
  翻訳調節は、遺伝子発現の多様化や細胞内外の環境応答として極めて重要な役割を果たしている。リボソームプロファイリング(またはRibo-Seq)は、細胞内翻訳を高感度、定量的、包括的、に解析する手法として広く使われている。しかし、現在の手法で、大量のsampleが必要であること、多検体を同時解析できないこと、あるいは翻訳の絶対定量、といった点で大きな問題がある。これらの問題を克服するために、我々は最近、リボソームプロファイリングのいくつかの新しい派生技術を開発した。これらの未発表の最新手法について紹介する。
   
FS04-02
【13:30-14:00】
五十嵐 龍治(東京科学大学生命理工学院 / 量子科学技術研究開発機構)
「ナノ量子センサーが切り拓く超高感度の定量生命計測」
  近年、蛍光ナノダイヤモンドを用いたナノ量子センサーは生命科学における次世代の計測技術として注目を集めている。特にダイヤモンド結晶中のNVセンターの優れた量子特性により、細胞内微小環境の温度やpHなどの指標を高感度・高分解能で可視化可能となった。本講演では、ナノ量子センサーの表面機能化や細胞計測などの最新の応用例を紹介し、基礎生物学から臨床まで幅広い分野への展開と今後の展望について議論する。
   
FS04-03
【14:00-14:30】
出口 清香(東京科学大学 総合研究院)
「iPS細胞とMPS技術による腸管機能の計測と疾患研究への応用」
  臓器機能の理解や疾患研究のため、様々なin vitroモデルが開発されてきた。腸管研究ではがん由来細胞株やオルガノイドが用いられるが、粘液層・上皮層・間質層からなる腸管粘膜の多層構造を再現することは困難である。そこで我々は、マイクロ流体デバイスを用いて間質流を加えながらヒトiPS細胞を腸管へ分化誘導することで、多層構造を有する腸管MPSを開発した。本発表では当該MPSの開発法だけでなく、それを用いた腸疾患研究への応用例を紹介する。
   
FS04-04
【14:30-15:00】
川端 健二(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所)
「MPS 搭載に適した次世代型血液-脳関門モデルの構築」
  ヒト iPS 細胞を利用した血液-脳関門(BBB)モデルはLippmann らが報告して以来、いくつかの問題点が指摘されている。その中で最も大きな課題は、iPS 細胞から分化誘導した脳血管内皮細胞(BMEC)では内皮マーカーの発現が弱く、代わりに上皮マーカーを発現しているという点である。そこで我々は遺伝子導入技術およびセルソーティング技術を駆使してこの課題を克服した新しいBMEC を作製することに成功したので報告したい。
   
FS04-05
【15:00-15:30】
山崎 大樹(国立医薬品食品衛生研究所)
「iPS心筋を使った心毒性評価の画像解析(仮)」
   
   
FS04-06
【15:30-16:00】
 
   
   
FS06 [桃源] 10月29日 14:00-15:30
 
医療データAI解析実践フォーラム
 

モデレーター :水野 聖士(東北大学)、小島 諒介(京都大学)、荻島 創一(東北大学)

AI関連技術は日進月歩で進化しており、その医療データ解析への応用は、研究デザイン、データ収集、データ処理、統計解析、モデルの適用などを含め、パラダイムシフトが必要である。本フォーラムでは、医療データのAI解析の中でも精密医療の実現に向けた最新技術とその応用、疾患の層別化や新たな治療法の開発に向けた取り組みなどのために、最先端のAI解析に実際に取り組んでいる研究者が研究発表を行い、最新の技術情報共有を行う。医療データAI解析に実際に取り組んでいる研究者、これから始めようという研究者にぜひご参加いただき、医療データのAI解析を実践している研究者の交流の場としてオープンに議論したい。

FS06-01
松村 健太(青森県立保健大学)
「現場への応用を見据えた、機械学習による社会医学、臨床医学、デジタルヘルスデータの解析」
  本発表では、現場での活用を起点に、機械学習を用いたデータ解析事例を紹介する。エコチル調査に基づく産後うつ予測では、保健師・助産師による紙ベースでの活用を想定し、母親と支援者双方にとって理解しやすいモデル設計が求められた。予測が外れた場合のリスク評価や、意思決定に資する推定目標の設定も課題となった。講演では、菌血症や先天性筋ジストロフィーの予測、スマートフォンによるPPG信号を用いたカフレス血圧推定など、複数の疾患・生体情報に対する解析事例を通じて、機械学習の現場導入に向けた視点と課題を考察する。
   
FS06-02
泉 晃(株式会社リュウェル/琉球大学)
「認知症AI診断の社会実装:ウェアラブル・映像・音声データ等のリアルワールドデータを用いたAI活用の実証」
  本講演では、認知症診断支援に向けて開発中のマルチモーダルAI解析技術における、リアルワールドデータ(RWD)活用の実践例を紹介する。映像・音声・ウェアラブルデバイスや生体センサ等の多様な非構造データを統合的に解析し、認知機能スクリーニングおよび重症度評価を行うAIアルゴリズムを構築している。現在、沖縄県内の医療機関や公民館等で実証展開を進めている。また非医療環境における認知機能評価の社会実装にも取り組んでいる。これらの知見をもとに医療RWDを活用したAIの実装における課題と可能性について共有・議論したい。
   
FS07 [研修室] 10月29日 14:00-15:30
 
計算ADMET研究会
in silicoアプローチによる薬物動態・毒性予測の最前線 ~PBPKから標的同定まで~
 

モデレーター :植沢 芳広(明治薬科大学)、長谷川 清(テクノプロ R&D)

計算科学技術の飛躍的発展により、in silicoアプローチを活用した薬物動態・毒性予測の精度は格段に向上している。PBPKモデルと機械学習の融合による薬物動態予測、物理化学的性質とADME予測モデルの評価、化学構造と生物活性情報を統合したリードアクロス毒性予測手法、さらにはAlphaFold構造データベースを活用した網羅的分子ドッキングによる標的同定法まで、多角的なアプローチが確立されつつある。本セッションでは、これら最先端技術の実用性と課題を産学の専門家とともに議論し、創薬プロセスの効率化と安全性向上への貢献を探る機会を提供したい。

FS07-01
長谷川 清(テクノプロ R&D)
「PBPKモデルと機械学習による化合物設計」
  Physiologically based pharmacokinetic (PBPK) シミュレーションと機械学習モデルの融合で、人の薬物動態がある程度予測可能となることを紹介したい。1mg/kgのIV Bolus薬物投与の条件下でPBPKシミュレーションを行い、AUCとCmaxを推定した。シミュレーションに必要な化合物のpKa, pKb, Fu値は事前に作成した化学グラフコンボルーションモデルで予測した。シミュレーションの推定値と実際の値の解離は、再度の化学グラフコンボルーションモデルで補正した。
   
FS07-02
半田 耕一(Meiji Seikaファルマ株式会社)
「物理化学的性質及び in vitro ADMEパラメーター予測モデルの研究動向」
  近年、人工知能や機械学習が創薬研究に広く導入され、低分子薬物動態領域でも予測モデルの開発が進んでいるが、tech-pushになり過ぎず、science-pullであるべきだ。本発表では、実験誤差、データの量と質、閾値設定の妥当性などを踏まえ、公開されている物理化学的性質及び in vitro ADME予測モデルの有用性と限界を評価する。(参考文献:Drug Discovery Today. 2025; 30(8):104422.)
   
FS07-03
吉成 浩一(静岡県立大学薬学部)
「化学構造情報と生物活性情報を活用したリードアクロスによる毒性予測手法の開発」
  化学物質の安全性評価において動物実験代替法の開発が求められているが、毒性の多様性や発現機序の複雑さ等の問題から、反復投与毒性試験や発がん性試験ではその開発はほとんど進んでいない。近年、既存の毒性情報を利用して未試験物質の毒性を予測するリードアクロスと呼ばれる手法に期待が寄せられており、欧米ではガイダンスが発出され、多くのケーススタディも行われている。本発表では、私達が取り組んでいる化学構造情報(分子記述子等)並びに毒性機序と関連するインビトロ試験結果(実測値および予測値)を利用したリードアクロス手法について紹介する。
   
FS07-04
武田 一貴(北里大学獣医学部毒性学研究室)
「構造プロテオームへの網羅的分子ドッキングによる標的発見法“Binding Proteomics”」
  化学物質の毒性という表現型は動物実験で容易に得られる反面、標的分子同定は困難である。発表者らはAlphaFold Databaseに収載の全プロテオーム構造(ヒトで約23000)への網羅的分子ドッキングで標的を検出するBinding Proteomics解析を提案した。この性能評価と腎障害が社会問題となったプベルル酸の標的候補について紹介する。Hayama T. et al., The J. Toxicol. Sci. 2025, 50(7) 309–324
   
FS08 [401] 10月29日 14:00-15:30
 
「AI創薬・メゾスコピック化学討論研究会」立ち上げ会 (2)
AI創薬の基本、実践、アルファフォールド、他
 

モデレーター :湯田 浩太郎(株式会社インシリコデータ)、池田 和由(理化学研究所)、大川 和史(塩野義製薬株式会社)

「AI創薬・メゾスコピック化学討論研究会」立ち上げ会(2)
AI創薬の実施には様々な技術が関連し、これらの技術を総合的に俯瞰して眺めつつまとめ、新たな創薬に結び付けることが必要となる。このような展開には様々な分野の研究者の見識や経験、新たな研究成果等の共有が極めて重要である。
本フォーカストセッションでは、創薬という観点で個々の研究分野や研究手法の異なる方々に集っていただいた。創薬自体の研究の奥の深さ(特にメデイシナルケミストリー)を理解し、その上で最新のAI創薬研究にチャレンジするという観点でAI創薬を理解し、攻めて行く。さらに最新のAI創薬事例として、昨年のノーベル賞に輝いたアルファフォールドへの理解を深める。この観点で、実際にアルファフォールドを用いて研究されている経験談と、今後の展開をまとめていただく。
近未来のAI創薬を検討、創造する上での参考にしていただければ幸いである。

FS08-01
多田 幸雄(CBI学会)
 
   
   
FS08-02
亀田 健(塩野義製薬株式会社)
「深層学習と計算科学の統合:Boltz-2と物理化学計算による創薬の展望」
  塩野義製薬株式会社
亀田健 小倉圭司 浅田直也 大川和史 服部一成

昨今の生体分子科学におけるトレンドとして、AlphaFoldやBoltzのような深層学習技術を用いた、立体構造予測および結合親和性予測が注目されている。2025年6月にOSSとして公開されたBoltz-2は、タンパク質や核酸・リガンドなどの複合体の立体構造予測と、結合親和性予測を行う二つのコンポーネントから構成される深層学習モデルであり、高精度な複合体構造と結合親和性の予測から、創薬への応用が期待されている。しかしながら、深層学習技術には外挿性の低さという課題があり、結合親和性の予測に関しては、FEPのような物理化学計算を用いた高精度な予測を後続して行うべきという声も存在する。このような背景から、計算プロセスとしての活用可能性の検証が不可欠だと考える。
そこで本発表では、自社の独自データに基づくBoltz-2の検証結果を中心に紹介し、創薬への応用可能性を議論する。Boltz-2の外挿性への対処の観点では、現在広く利用されているFEPや、高速量子化学計算手法として期待されるFMO-DFTBを検討し、結合親和性予測に関する各手法の計算コストと精度のバランス等の結果を交えて報告する。これらの議論を通して、現状の深層学習技術と計算科学技術との組み合わせが、創薬プロセスに与える影響を見極め、特に効率化と精度向上に向けた具体的な課題を提示していきたいと考えている。
   
FS08-03
 
 
   
FS09 [407] 10月29日 14:00-15:30
 
分子ロボットの動作設計基盤
 

モデレーター :小宮 健(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

 

FS09-01
姫岡 優介(東京大学大学院 理学系研究科 生物普遍性研究機構)
「細胞死の理論と生命を創る難しさの数理」
  Understanding the inherent difference between life and non-life is one of the central topics in biology. For dissecting life and non-life, development of the theory of cell death and that of difficulty of constructing life-like system would be indispensable. In this talk, I will present our recent attempt on these topics.

Currently, the criteria for microbial cell death are purely experimental. There is debate about whether different assays lead to inconsistent judgements of cell viability. Therefore, it would be beneficial for the field of biology to define 'death' mathematically. However, attempts to develop theoretical frameworks for cell death remain largely unexplored. In the present project, our aim was to develop a cell death framework based on controllable cellular states.

We start by defining 'dead states' as cellular states that cannot be returned to 'representative living states', regardless of controllable parameters such as gene expression levels and external culture conditions. The representative living state is a reference state of ‘living’ and an intracellular state of steadily growing cells is a straightforward choice for microbes. This definition requires a method to compute restricted, global and nonlinear controllability, for which there is currently no general theory. We have developed ‘Stoichiometric Rays', a simple method for solving controllability computations in catalytic reaction systems. This enables us to determine how enzyme concentrations should be modulated to transition a metabolic state from one state to another.

We have used the stoichiometric rays to compute the controllability, and therefore the dead states, of a kinetic model of E. coli central carbon metabolism. We also quantified the boundary dividing the phase space into live and dead states, termed the 'Separating Alive and Non-life Zone (SANZ) hypersurface'.

Another approach to analysing life-death boundaries is to quantify the rarity of biochemical systems performing certain functions, such as cell growth and ATP production. We have developed a method to compute the steady states of a kinetic model of cellular metabolism with ultra-high computational efficiency. Using the steady-state enumeration method, we quantified the rarity of homeostatically functioning steady metabolic states.

In the talk, I will first present our theoretical framework of cell death and then discuss our preliminary findings on the quantification of rarity.
   
FS09-02
中茎 隆(九州工業大学 大学院情報工学研究院 知的システム工学研究系)
「ケミカルAIに向けたプログラム可能な生体分子回路の開発 〜記憶と学習機能の実装」
  In this presentation, we introduce a design and implementation strategy for biomolecular circuits that possess memory and learning capabilities, aiming to realize adaptive signal processing for a chemical AI system. This research was performed as a part of the Molecular Cybernetics Project in Grant-in-Aid for Transformative Research Areas (A), which seeks to develop intelligent molecular systems.

Recent advances in dynamic DNA nanotechnology have demonstrated the feasibility of DNA-based computation. However, realizing plasticity—the capability to adapt based on past inputs—remains a major challenge. In
the project, we mainly addressed three key themes essential for chemical AI systems: (1) Resetting for repetitive inputs, (2) Memory function, and (3) Learning function such as acquisition of conditional reflex.

For Theme 1, we tackled the problem of once-only responses by designing circuits that can be reset and reused. We explain two approaches: (i) irradiation-based resetting, using light-sensitive azobenzene-modified DNA to switch states reversibly; and (ii) degradation-based resetting, which uses enzymatic degradation of DNA/RNA strands to reset the system. Both approaches were experimentally validated with successful repetitive input-output cycles, proving their applicability in wet-lab settings.

In Theme 2, we developed a molecular memory module (MMM) capable of storing external input information. The MMM was designed as a DNA reaction network with high modularity and theoretical robustness. We applied singular perturbation theory to reformulate its dynamics into a two-timescale system, enabling robust signal retention during memory readout. Simulation and circuit integration tests confirmed that the module could accumulate and preserve molecular information as intended.

Theme 3 focuses on constructing a plastic DNA circuit capable of acquiring a conditional reflex, analogous to the transition from a YES gate to an OR gate upon training. This was achieved by integrating the resetting, memory, and update mechanisms into a single DNA circuit. We demonstrated this adaptive behavior through simulation and experimental validation, using input-triggered molecular updates and enzymatic degradation. Further generalization to a multi-input system was also explored, showing scalability and modular design viability.

Overall, we succeeded in building DNA-based signal processing with adaptive behavior. Our design principles will provide a theoretical and experimental foundation for future developments in chemical AI systems, potentially enabling molecular devices that respond dynamically to environmental stimuli and learn from them over time.
   
FS09-03
西 羽美(東北大学 大学院情報科学研究科,お茶の水女子大学 基幹研究院)
「生成AIによるタンパク質配列空間の探索」
  Recent advances in protein-related AI technologies, including AlphaFold for structure prediction and generative approaches such as ESM3, have significantly impacted how researchers approach protein analysis and design. These technologies now enable the generation of novel protein sequences, potentially exploring areas of protein sequence space not represented by naturally occurring proteins. However, practical application remains challenging, with generated sequences often diverging structurally and functionally from known protein families. In this talk, I will first briefly survey recent developments in protein generative AI, which have demonstrated varying degrees of success in navigating protein sequence and structure spaces.

In our ongoing project, we aim to generate protein sequences that can bridge gaps between existing protein families by controlling the generative process. We leverage embedding representations from models like ESM2 to guide sequence generation. Preliminary results indicate that unguided generation often leads to sequences far from known functional regions, confirmed by structural assessments using AlphaFold2.

One critical challenge is interpreting and visualizing these high-dimensional protein embeddings. Our recent experiments, which include UMAP visualizations of generated versus natural protein sequences, highlight the difficulty in understanding what these embeddings represent biologically. We explore various approaches, such as targeted "inpainting" of protein segments, to enhance both the quality and interpretability of generative outputs.

Finally, I will share detailed insights and preliminary findings from our practical experiments with generative protein AI, highlighting both its promising applications and current limitations.
FS10 [406] 10月29日 14:00-15:30
 
計算科学研究者のキャリアの歩み方~多様なキャリアパスから学ぶ~
 
モデレーター : 白石 幹(第一三共株式会社)、立石 優輔(熊本大学大学院 自然科学教育部)、
渡邉 博文(株式会社ウィズメーティス)、熊澤 啓子(株式会社帝人ファーマ株式会社)

CBI学会には多様なバックグラウンドを持つ研究者が所属しており、それぞれが異なるキャリアパスを歩んでいます。しかし、若手研究者にとって、自分の研究がどう現実社会で生かせるのか、今の歩みが次にどうつながるのか、膨大にある進路の中でどれを選ぶのが良いのか、といった悩みは尽きません。 そこでCBI若手の会では、若手学生や研究者が今後のキャリアパスを考える際の参考となることを目指した企画を開催いたします。
本企画では、ケモインフォマティクス・バイオインフォマティクス領域の研究者で様々なキャリアを歩んできた3名の研究者をお招きします。登壇者の方々には、これまでの歩みやその選択理由、研究者として成長していく過程で経験された様々なエピソードについてお話しいただきます。 3名の講演後には座談会を行い、登壇者と司会者がテーマに沿って対話することで、参加者により身近で実践的な内容をお届けします。ケモインフォマティクス・バイオインフォマティクス分野で活躍したい方、自分の研究の社会での活用方法を模索している方、将来の方向性を考えている方にとって、貴重な学びの機会となることを期待しています。

FS10-01
岡田 晃季(第一三共株式会社)
「コンバージェンスを目指したキャリアの途中」
  博士号取得までは主にウェットな研究に従事していました。修了後は計算化学ソフトウェアを提供する会社で、ソフトウェアの紹介や小規模な開発を担当させて頂きました。その後、前職にて低分子創薬、現職にて様々なモダリティ創薬の効率化に向けた計算化学業務に取り組んでいます。 多様なお仕事を経験させて頂いた中での失敗や学び、またその経験を全集中(converge)して取り組んでいる現在の業務についてご紹介させて頂きます。
   
FS10-02
伊藤 眞里(大阪大学 薬学研究科附属化合物ライブラリー・スクリーニングセンター)
「「問い」と「出会い」に導かれた研究人生」
  「病気のはじまりはどこだろうか」代謝マップを眺めながら浮かんだこの「問い」を追い続けています。遺伝子解析から臨床試験まで、様々な分野で素晴らしい師との出会いがありました。場所や環境は変わっても、この問いを追い続けられるように導かれてきました。 幾つになっても今が一番忙しくて楽しい。この思いを皆様と共感したいと思っています。
   
FS10-03
片倉 晋一(JBIC(一般社団法人バイオ産業情報化コンソーシアム))
「元製薬企業の研究者がアカデミの産学連携で思うこと」
  30年以上、製薬企業の探索研究に従事した後、アカデミア(大学)に移り、産学連携を担当してきました。 創薬のearly stageでずっと研究してきたものが、臨床とのつなぎ役として産学連携の現場で経験したこと、思うことをご紹介したいと思います。
   
FS11 [研修室] 10月30日 14:00-15:30
 
計算科学が支える毒性予測:幹細胞×AIの挑戦
 

モデレーター :曽根 秀子(横浜薬科大学)

過去2年間のCBI学会では、ヒト幹細胞とAIを融合した新たな毒性予測法「StemPanTox alpha」の開発を紹介してた。本年は、「計算科学が支える毒性予測:幹細胞×AIの挑戦」をテーマに、事業化を見据えた次世代モデル「StemPanTox beta」の開発状況と活用事例を報告します。StemPanTox betaは、ヒトES細胞のトランスクリプトーム解析と機械学習を組み合わせ、分子構造に依存しないDART予測を可能にするシステムです。ICH S5(R3)に準拠した40物質を対象に、GGMネットワーク解析とSVM/LightGBMによる7種の毒性予測において高精度を実現しました。今後の行政受入に向けた展望についても議論します。

FS11-01
中村 文彬(ウッシオバイオ)
「StemPanTox alphaによる化粧品成分の安全性評価」
  化粧品分野では多くの国々が動物実験を禁止しており、日本においても企業による自主的な廃止が進んでいる。さらに2025年4月、米国FDAは前臨床安全性評価における動物実験の段階的廃止を目指すロードマップを公表し、代替法の重要性が一層高まっている。こうした背景のもと、我々は未分化ヒト幹細胞と機械学習を組み合わせた毒性評価システム「StemPanTox」の構築を進めてきており、現在、生殖発生毒性を含む長期毒性への対応を視野に、評価系の拡張を進めている。本発表では、StemPanToxの技術的な拡張および“StemPanTox alphaシステム”を用いた化粧品成分を含む安全性評価への応用可能性について報告する。
   
FS11-02
加藤 毅(群馬大学情報学部)
「StemPanTox betaに搭載の機械学習の比較検討: StemPanToxbeta 開発中データを中心に」
  StemPanTox は化学物質の曝露によって変動する遺伝子発現のパターンを特徴量として入力し、毒性を予測するシステムである。本研究プロジェクトでは、StemPanTox beta と名付けて、毒性予測精度向上のために機能の拡充に取り組んできた。RNAseq技術によって得られる遺伝子発現データには、多数の遺伝子の情報が含まれており、転写因子に限定したとしても3000以上にもなる。しかし、それらの遺伝子のうち、多くは毒性予測に役立つ明白な反応を示さないため、どの遺伝子セットを選択するかが、予測性能に大きく影響する。これまでは得られた発現量の変動の大きさのみを基準として遺伝子セットを選択していた。これに対して、本研究プロジェクトでは、生物学的な事前情報を使って、毒性予測への寄与が大きな遺伝子セットに限定して遺伝子を選択する方法を試してきた。24物質で検証した結果、関連遺伝子情報の利用が予測性能の向上につながることは、昨年すでに報告している。一方、遺伝子発現データが拡充し、現在利用可能なデータは増加した。本発表では、拡大したデータセットを使って改めて性能評価を実施し、関連遺伝子セットが機械学習に有用なサイド情報として機能するか検証し、その結果を報告する。さらに、学習アルゴリズムの違いが予測性能に与える影響についても毒性ごとに解析し、その結果を併せて報告する。
   
FS11-03
中尾 洋一(早稲田大学先進理工学部・研究科)
「StemPanTox の活用例:StemPanTox alphaを用いた天然化学合物の生物活性の予測」
  天然化合物には多様な生物活性が知られており、医薬品や機能性食品の原料として用いられてきた。これらの機能性を有効利用するにあたり、近年、全身毒性や長期毒性の把握が求められるようになってきた。そこで、本セッションでは、機能性天然化学合物について、StemPanToxを用いて長期毒性予測を行った結果について紹介する。
   
FS012 [407] 10月30日 14:00-15:30
 
「AI創薬・メゾスコピック化学討論研究会」立ち上げ会 (3)
AI創薬に関連するAI およびIT関連技術に関する討論
 

モデレーター :湯田 浩太郎(株式会社インシリコデータ)、生島 髙裕(株式会社 数理先端技術研究所)

 AI創薬で最も重要な基本技術はAIそのものである。しかしこのAI 自体は、化学を基本とした研究者には親しみにくく、意図的に情報収集しようとしても、簡単には集まらない可能性は高い。これは、情報収集に最も重要な検索キーもわからず、AI関連情報に会っても、理解するための基本技術を有していないためである。
 本フォーカストセッションでは化学研究者の最初のAIへのアプローチに相応しいノウハウを有した先生。また、化学分野にAIを適用するアプローチ等を行っている先端のAI創薬・化学研究システムに詳しい先生。 さらには、AI関連技術の先端を行くNVIDIAで現役で活動されている先生と、正に、AI創薬のAIとは何であるという問いに答えられる布陣で講演会を実施する。

FS12-01
生島 髙裕(株式会社 数理先端技術研究所)
「創薬とは何か?広義の創薬を議論する。メゾスコピックでの課題の数々、生命管理システムの側面とAIツールの最先端」
  広義の創薬とは、生体の病的表現型をもたらす多階層ネットワーク全体の構造と力学を記述し、健常状態への最小介入によるシステム制御を達成するための化合物群・投与条件の最適設計プロセスであると定義する。この観点でメゾスコピックでの課題を列挙し検討する。また、生命を管理すると言った視点>からライフログを含めたモニタリングシステムの未来を予見し、これらの実現に必要な最先端AIの動向をリサーチし応用方法の未来を考察する。
   
FS12-02
結城 伸哉(株式会社Elix)
 
   
   
FS12-03
岩谷 正樹(NVIDIA)